2016 Fiscal Year Annual Research Report
自己株式取得の新たな財源規制基準の提案-株式買取請求制度との関係の検討から
Project/Area Number |
16J08417
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
濱村 実子 神戸大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 財源規制 / 自社株式買取 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、米国法との比較検討から、日本会社法における自社株式買取の新たな財源規制基準を提案することを最終目的としている。「研究実施計画」では、デラウェア州一般会社法における株式買取請求および自社株式買取に対する財源規制に関する議論・判例裁判例の検討を計画していた。しかし、財源規制の基本的な目的である「会社債権者の保護」に関する研究が不足していたため、当該年度は、広く会社債権者の保護に関する米国法の議論の検討を行った。特に、会社債権者保護における取締役の信認義務に関する議論を中心に検討を行った。このような検討は、本研究が自社株式買取の新たな財源規制を模索する上で、自社株式買取に関わる取締役の行為基準および取締役の責任のあり方に着目している点から重要である。 米国における会社債権者保護のあり方については、株主との利害調整を如何に図るかというに基づき、会社債権者保護は契約に限るべきという伝統的な見解と、契約だけでなく取締役の信認義務による保護も与えるべきとの見解の対立がある。特に後者の見解は、柔軟な利害調整を図るため、会社債権者の個々の特性に応じて信認義務の保護を与えるべき場合があるとの主張が着目される。更に近年の裁判例では、会社債権者と株主の利害が対立する契機となった取引に取締役または支配株主が利益相反関係にあった場合には、取締役が、会社債権者の利益を考慮し当該取引を公正に行ったかどうかを審査しているものが見られた。 以上の検討より、米国では、取締役は会社債権者保護の観点からその行為上の責任を負う場合があることが明らかとなった。この検討結果は、自社株式買取の新たな財源規制を考察する上で、株式買取請求における取締役の行為基準だけでなく、米国法における一般的な会社債権者保護に関する取締役の責任からも示唆が得られ、検討の可能性が広がったことに意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記、研究実績の概要のとおり、当該年度は研究計画を変更し、一般的な会社債権者保護に関する議論の検討を行った。よって、当初計画していた米国における株式買取請求および自社株式買取に対する財源規制に関する議論・判例裁判例の検討については、これまでの研究の蓄積はあるものの、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、当該年度で検討した米国における会社債権者保護の議論および考え方を基礎に、自社株式買取の財源規制が問題となった事例を検討し、取締役の行為基準の考察を試みる。また、財源規制において取締役の行為に求められると考えられる公正性について具体的な検討を行うため、株式買取請求における取締役の行為基準との比較検討を行いたい。
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