2017 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト自己位置同定の計算論―実環境での脳・行動計測による脳内情報処理モデルの研究
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16J08502
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Research Institution | Advanced Telecommunications Research Institute International |
Principal Investigator |
森岡 博史 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 神経科学 / 神経工学 / 脳計測 / 実環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
実環境脳計測データ解析を通して,実環境におけるヒトの自己位置推定アルゴリズムを解明することを目的とする.本研究ではそれを実現するために,ヒトが実環境で動き回っている状況下で取得された脳計測データからヒトの認知機能を解明するための新たな手法を開発し,ヒトの内部状態モデルとして構築した自己位置推定機能の計算論的アルゴリズムの,神経科学的妥当性を検証する. 当該年度は主に,脳計測データベースから脳の情報処理に関わる部位の安定な推定を実現することを目的とし,第一年度に開発した「脳計測データベースからの脳活動に由来する非定常成分の抽出法」をさらに発展させるため,英国のUniversity College Londonに滞在し,主要な脳計測データ解析手法の一つである独立成分分析の大家であるAapo Hyvarinenとの共同研究に従事した.具体的に得られた成果は以下のとおりである. 【時系列データからの非定常成分の抽出法の研究】 本研究課題において重要な問題となる「自発的な脳活動を高次元な脳・行動計測データから抽出する」という問題を解決するため,新たな解析手法として「非線形空間的独立成分分析法」を提案した.提案法は,脳計測データから非線形に脳活動ネットワークを抽出する手法であり,観測データから非線形特徴量抽出器を学習することで,高次元空間におけるデータから,脳活動のタイミングに対して不変なコンポーネントを抽出することが可能となる.提案法の有効性を示すために fMRI安静時脳活動の大規模データベースに適用した結果,1) 得られたネットワークの空間パターンの被験者間類似度が従来法よりも高いこと,また,2) 提案法では線形性を仮定した従来法よりも広い範囲にわたるネットワークが抽出されていることがわかった. これらの研究内容をまとめた成果は国際会議にて発表予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は主に,前年度における「脳計測データベースからの脳活動に由来する非定常成分の抽出法の研究」をさらに拡張するための共同研究を行い,前年度よりもさらに高次元な自発的脳活動データにも適用可能な解析法の研究開発を行った.この手法は,自発的な自己位置推定認知機能を,高次元な脳計測・行動計測データから解明することを目的とする本研究課題において重要となる.この研究内容についてまとめたものは国際会議にて発表する予定である他,国際学術雑誌に投稿準備中である.以上の結果は当初の研究計画に沿ったものであり,当初の目的を期待通り達成していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
現在は,研究の次の段階である「脳・環境計測データからの被験者状態と脳活動の統一的な特徴抽出法の研究」に向けて,複数の計測モダリティ(脳計測データと状態計測データの混合)を融合して解析可能な手法の開発を検討しているところである.それが実現された後,実際にヒトが自己位置推定タスクを行っている時の脳の活動・行動データを計測・解析することで,ヒトの計算神経科学モデルを構築し,実環境におけるヒトの自己位置推定アルゴリズムの解明を目指す.
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Research Products
(3 results)