2016 Fiscal Year Annual Research Report
多様な光合成様式がマンネングサ属の種多様化をもたらしたことを検証する
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16J08504
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
伊東 拓朗 東京農工大学, 大学院連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 適応放散 / 平行進化 / マンネングサ / 台湾 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベンケイソウ科マンネングサ属は東アジア地域を一つの多様性の中心に持つ。中でも亜熱帯・熱帯域に位置する台湾は、九州と同程度の面積の大陸島でありながら著しくマンネングサ属種の固有種率が高い。核ITS及び葉緑体trn L-F領域に基づく東アジア産マンネングサ属の網羅的な系統解析の結果、特に高地環境の多様な光・水分環境に生育する台湾固有のマンネングサ属種は2系統からなり、それぞれ類似したニッチシフトと急速な種多様化を遂げていた。この著しい種多様化の要因を明らかにするため、多様な光合成様式をもつ本属の特徴に着目した適応形質の探索とそれに関連する遺伝子群を検出・配列比較することで種分化メカニズムの検証を行うことを目的とした。 2016年度には、適応形質としての光合成様式の推定のため、安定炭素同位体分析を重点的に行った。結果として生育環境により適応的な光合成様式を各種が行っている可能性が示唆された。 更に台湾固有のマンネングサ属種について各種サンプル数を大幅に追加し、葉緑体5領域(合計6000bp程度)を追加シーケンスしたものをML法を用いて再系統解析を行った。しかしながら、台湾固有種の種間関係は系統樹上の支持率が低く、不明瞭なままであった。一方で*BEASTを用いたMultispecies coalescent 解析と分岐年代推定の結果、2つの台湾固有のマンネングサ属の急速な種多様化は、特に高地性の種においてほぼ同時期の約80万年前に開始していることが明らかにり、約100万年前の山脈形成に伴い爆発的な種多様化は成立したことを示唆した。また、Bayesian Binary MCMC解析を用いて祖先形質復元を行った結果、放散を遂げた各系統はそれぞれ中国東部と日本の系統が独立的に移入したことも示唆されており、大陸島であるがゆえに複数系統の移入を可能にして平行放散が成立したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンプリングに時間を費やしてしまったために本来予定していた計画の順番は前後しているものの、本研究結果を国際誌・学会にて発表することができたため、全体として得られた成果としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き台湾産マンネングサ属について適応形質を探索すべく、葉や茎の構造および葉のリンゴ酸含量の変動を計測していき、各種の葉形態および光合成様式データを得る予定である。 今後は光合成様式や形態、生態の異なるモデル2種におけるRNAseqデータを基にした具体的な適応遺伝子の探索をし、得られた適応形質データと合わせて適応進化メカニズムの検証を進めていく予定である。また、適応放散を起こした種群全体についてRADseq解析を用いてゲノムワイドデータを得ており、詳細な種間関係と適応遺伝子座の推定も併せて行っていく予定である。
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Research Products
(7 results)