2016 Fiscal Year Annual Research Report
時空間信号処理に基づく集束超音波ビーム強度分布の3次元可視化
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16J08611
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松井 和洋 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 集束超音波治療 / 生体内音場推定 / 時間反転法 / 散乱不均一補正 / 音響放射力 |
Outline of Annual Research Achievements |
強力集束超音波治療は切開を必要とせず腫瘍の焼灼治療を行うことが可能な次世代の低侵襲治療技術として研究開発が行われ、一部臨床治療技術として実用化されている。超音波は組織の音速・減衰特性等の不均一性により、集束超音波発生装置の幾何学的焦点とは異なる部位にエネルギーが集束する可能性や集束部位における超音波強度の制御性が大幅な低下するといった課題がある。本研究では、強力集束超音波治療技術において重要な組織に対する熱的効果を示す指標であるサーマルドーズ量推定技術の開発を目的とし、超音波撮像を用いた強力集束超音波治療の焦点定位および強度推定手法に関して、以下の研究成果を得た。 (1)透過系計測システムにおいて、集束超音波が形成する音場の推定問題に対して、時間反転法を拡張し、ビームフォーミングを活用することで、高速かつ簡便に同定する手法を提案し、妥当性を検証した。 (2)散乱系計測システムにおいて、集束超音波が形成する音場を推定問題に対して、生体組織の散乱不均一性の影響を補正して集束状況を正確に推定する手法を提案し、ex vivo系において有効性を確認した。 (3)集束部位での音響強度の推定問題に対して、音響放射圧で組織が変位する現象を利用し、その変位計測および組織力学モデルを仮定した理論計算から強度推定する手法を提案し、妥当性を実証した。 以上の研究成果は、強力集束超音波治療の有効性・正確性・安全性を向上する上で重要となるサーマルドーズ量推定のための基盤要素技術を与えるものであり、臨床応用への有用性が高い研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
強力集束超音波治療におけるサーマルドーズ量推定のための音場・強度推定技術の開発に関して、透過系および散乱系計測システムの各々について、集束超音波が形成する音場を高精度に推定できることを、ファントム実験において、実証することができた。また、数値計算により、手法の制限についてより詳細な議論が可能となった。さらに、音響放射圧で組織が変位する現象により、集束部位での音響強度を推定する手法を提案し、その妥当性の実証に成功した。以上の研究成果は、当初の予定に十分値するものであり、研究が順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
超音波治療として近年注目されている強力集束超音波治療の信頼性と有効性の向上に貢献する医用画像技術を用いた定量的な音場推定法の開発を目的とし、(1)時間反転法を応用した2次元透過音場推定法の提案と実証、(2)集束点付近で誘起される力学的応答量の実測に基づいた音響強度推定法の提案と初期検討 に関して得られた研究成果について、以下のような今後の研究推進方策をとる。 (a)上記(1)の展開: (a-1)超音波撮像素子キャリブレーション手法の適用による透過音場推定法の定量化、(a-2)2次元音響アレイを用いた振幅・位相計測による透過音場推定法の3次元化 (b)上記(2)の実証と改良:(b-1)種々の粘弾性特性を持つ生体模擬材料を用いた音響強度推定法の実証、(b-2)音波の非線形性および生体不均質性を考慮した推定手法の改良とその実証 (c)新手法の探索・検証: 音響経路上に障害物(頭蓋、肋骨等)が存在する場合においてもモニタリング性能が担保され、かつ3次元描出性に優れる磁気共鳴画像化技術(MRI)を用いた音響強度推定法の検証等
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