2017 Fiscal Year Annual Research Report
精神分析への態度の変遷からみたドゥルーズ哲学における強度概念の成立と進展の研究
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16J08834
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鹿野 祐嗣 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ドゥルーズ / ガタリ / 現代フランス哲学 / 精神分析 / 哲学史 / 反精神医学 / マルクス主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、20世紀フランスを代表する哲学者ジル・ドゥルーズの初期主著『差異と反復』(1968)から『意味の論理学』(1969)を経て、ガタリの共著『アンチ・オイディプス』(1972)にまで至る存在論的な枠組みの変化、とりわけ「強度」概念の成立との過程を、ドゥルーズの精神分析理論に対する評価とその使用法の変遷との相即的関係という視点から解明することにある。 昨年までの研究で申請者は、ドゥルーズの『意味の論理学』第27セリーから第34セリーにおける「力動的発生」の過程とエディプス・コンプレックスの詳細な分析に注力しつつ、『意味の論理学』全体を注釈する大部の博士論文を完成させた。そして昨年度では、そうした前年度の成果を発展的に継承すべく、既にさまざまな箇所で成果を発表している『差異と反復』における存在論と精神分析理論の交差的読解をさらに深化させつつ、ガタリとの共著である『アンチ・オイディプス』の読解に着手していった。具体的には、『アンチ・オイディプス』に特有の存在論(再定義された現実界の一元論)をなす欲望の唯物論の本質を理解すべく、その背景となるマルクス主義の文献購読に注力した。また他方で、ガタリの影響下で『アンチ・オイディプス』以降顕著になるドゥルーズの反精神医学への傾倒にも着目し、レインやマルクーゼ、ライヒといった理論家たちの著作の検討に取り組む準備を進めた。 ドゥルーズおよびドゥルーズ&ガタリの哲学研究は世界的に見てもまだ日が浅く、十分な水準の研究がなされているとは到底言えない状況であるため、本研究の成果が公表された暁には大きな意義をもつことは間違いない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、『差異と反復』と『意味の論理学』の読解の水準を哲学・精神分析の両面から深めたうえで、『アンチ・オイディプス』読解およびそのために必要なマルクス主義と反精神医学運動の研究に取り組むことができたため。数年を要する研究であるため、具体的な成果が公表されるまでには時間を要するが、進捗状況としては概ね予想していた速度で進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、今年度も『アンチ・オイディプス』およびマルクス主義と反精神医学の研究を進めていく。
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