2016 Fiscal Year Annual Research Report
「医学的に説明されない症候群」の症状に着目した相互行為論的研究
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16J09228
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
景山 千愛 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 医療社会学 / 化学物質過敏症 / 相互行為分析 / 医学的概念 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下の二点の研究を行った。一つ目は、化学物質過敏症患者が病を抱えながら行う対面相互行為についてである。二つ目は、化学物質過敏症が社会制度をまたいで問題化されるときの概念の変容である。 一つ目については、化学物質過敏症を抱えて生活する人々が、その病ゆえに直面する困難や齟齬を、相互行為分析によって解明することを試みた。研究計画においては、連絡を取っている化学物質過敏症患者の他に、新たな化学物質過敏症患者への聞き取りやフィールド調査を行うことを予定していた。しかし、健常者である筆者が、化学物質過敏症患者にアクセスすることで、患者の体調を損なう可能性があることから、インタビューデータのほか、化学物質過敏症患者の闘病記を積極的に用いることにした。闘病記は、対面相互行為を直接的に捉えたものではなく、筆者の解釈が入り込んだものだが、患者の主観を捉えるのに適していると考えられる。 二つ目の概念の変容については、近代医学において論争の只中にある化学物質過敏症概念が、他の社会的領域に持ち出された時にどのような変容が起きているのか、分析を試みた。具体的には、法廷における化学物質過敏症の医学的正統性についての議論について、判決文を対象に分析を行った。こちらの研究内容はもともと企画していたものではなかったが、これまでの日本社会における化学物質過敏症概念の変遷は、患者の経験や発言のバックグラウンドを成すものでもあるため、研究の足掛かりとなると考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、研究の骨子となる相互行為分析のほか、研究全体の背景となる化学物質過敏症概念の変遷についての解明を試みた。これらの分析は、来年度の研究成果公表の土台となると考えられる。一方、今年度の研究目標としていた論文掲載には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度はデータ・資料の収集を続けるほか、構想中・修正中の研究成果の公表を進める。一方、2016年度は、聞き取り中心の研究計画を立てていたが、闘病記を中心とした文書の調査に変更することとなった。化学物質過敏症患者への調査が再開できるかどうか、今後慎重に検討していく必要がある。
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