2016 Fiscal Year Annual Research Report
高解像度全球予報システムによる成層圏界面上昇現象のメカニズム及び予測可能性の解明
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16J09665
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
野口 峻佑 気象庁気象研究所, 気候研究部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 成層圏界面上昇 / 突然昇温 / 極渦強化 / 極夜ジェット振動 / 予測可能性 / 季節予報 / 観測システム |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)気象研究所地球システムモデルによる成層圏界面上昇(ES)現象の再現とその影響評価を目指し、モデル研究開発作業を開始した。下層大気場の再解析場へのナッジング・化学気候モデルとの結合・アンサンブル予報システムとの併用などの各種検証実験を、2009年1月と2002年9月の成層圏突然昇温(SSW)を題材に行い、予期した通りの動作・実験結果を確認した。 (2)ES形成期の成層圏循環変動として卓越する、極夜ジェット振動(PJO)の予測可能性に関して、以下の2種類のデータ解析を実施した。まず、週から月スケールでのPJOの予報成績評価を、既存の解析をリファインする形で行うことにより、極渦弱化であるSSWやその対となる極渦強化(VI)に伴うPJO卓越期において、下部成層圏および対流圏の予報成績が向上することを明らかにした。また、VI時の成層圏の予報は不確実性が大きいため、それを期待する際には注意が必要であることも指摘した。ついで、季節以上のスケールでの予報に対応するため、外部強制に対するPJOの応答評価を行った。特に、熱帯域および中緯度域の海面水温偏差に対するSSWやVIの頻度変化を、それらを要素とするPJOの観点から、気象研究所大気大循環モデルによる大規模アンサンブル実験データを用いて連続的に表すことで、従来よりも詳細な応答特性を描くことに成功した。 (3)ESの再現性がナッジングに用いる再解析場に依存することに端を発し、再解析における成層圏の極端変動の再現性を調査した結果、同化データが従来型観測に限定される再解析では、2002年9月のSSW時の極渦分裂が再現できていないことがわかった。追加の解析により、解析場の(誤)差の水平分布はゾンデ観測地点の分布と整合的な現れ方をしていることや中間圏領域における場の拘束の影響を示し、顕著現象の検出における衛星観測の恩恵を再認識できる例を提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、(1)のモデル作業に重点が置かれている。元々単年度で成果を期待するべき性質の作業ではないが、データ形式に依存した問題などへの対処に時間がかかっている。その一方で、今年度はこれまでの研究を発展させつつ本研究をサポートする、(2)のデータ解析研究を推進させた。また、想定外ではあるが(3)についても成果をあげ、論文を投稿済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、モデル高層化・高解像度化の作業に着手し、ESの再現性およびその駆動源に関する研究を進めていく。また、現状のモデル設定でも可能な研究がいくつかある(例えば、化学モデルとの結合設定によって、ESに伴い下部熱圏・中間圏から成層圏へと取り込まれた窒素酸化物がオゾン量の変動を通じて循環場へ及ぼす影響の評価などを行える)ため、実施を検討する。今年度実施したデータ解析の結果についても論文化を進めていく。
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Research Products
(11 results)