2017 Fiscal Year Annual Research Report
構造‐機能連関に基づいた新たな光遺伝学ツールのデザイン
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16J09672
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
細島 頌子 名古屋工業大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | オプトジェネティクス / 微生物型ロドプシン / 電気生理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では微生物型ロドプシンの機能を電気生理学・分光学的に解析し、光感受性タンパク質の構造‐機能連関に基づいて、1.光に対しての高感度の微生物型ロドプシン改変体の作製や、2.イオン選択性の高い光感受性タンパク質をデザインし、それらを用いて生命現象をコントロールすることを目的としている。これに向け2017年度は、主にナトリウムポンプ (KR2)の電気生理学的解析を行った。その結果、(1) 細胞外にNa+が存在する場合は、細胞内のNa+濃度によって、H+が輸送されるか、Na+が輸送されるかが決まること、(2) 細胞内外にNa+が十分に存在し、pHが中性付近であれば、KR2はNa+を選択的に輸送していること、(3) 中間体が電位依存性を持つことが明らかになった。 KR2は2015年に結晶構造も明らかになっており、構造‐機能連関に基づいた改変体の作製の鋳型として用いるのに適している。一方で、精製タンパク質や大腸菌を用いた分光学的実験では、KR2の細胞内側と外側の溶液のイオン組成や、細胞内外でのイオン濃度の勾配などを生じさせることが難しいため、細胞内外のイオン組成・勾配が、KR2のイオン輸送機構にどのように影響するのか明らかになっていなかった。本研究では電気生理学的手法と組み合わせることで、これらの問題を解決し、上記、(1)から(3)のような、イオン輸送機構についての新たな知見を見出した。KR2のイオン輸送機構についての電気生理学的な知見は非常に少なく、本研究の成果は今後、ロドプシン分野の研究を牽引していくに足る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は、(1) 光応答性の高い微生物型ロドプシンの探索、(2) 特定イオンへの選択性が高い微生物型ロドプシンの探索および改変体の作製、(3) イオン輸送の方向性の反転、(4) 微生物型ロドプシンの波長制御、の4点を計画に掲げていた。光に対する応答性やイオン選択性、活性化の波長等について、whole cell patch clamp法を用いて電気生理学的に解析した。その結果、その結果、オプトジェネティクスで広く用いられているチャネルロドプシン2より、Na+選択性が高く、光電流の大きいチャネルの再評価や、様々な陰イオンを通すクロライドポンプを見出すことが出来た。今後、内向きにH+を輸送するポンプについても解析していく予定である。また現在、Ca2+の選択性を上げる改変体の作製も進めている。KR2の波長制御は、当研究室ですでに実験が進められており、大腸菌の系では成功している。光応答性の高い微生物型ロドプシンについては、今後も実験を続ける予定である。以上より、現在までの進捗状況を『おおむね順調に進展している』と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでの研究によって明らかになった知見をもとに、より生理的意義のあるオプトジェネティクスツールの開発を目指す。その他、ナトリウムポンプやクロライドポンプ、新規チャネルロドプシン等の電気生理学的解析を継続し、構造‐機能連関に基づいたツール開発を行う。またキメラチャネルロドプシン改変体である、C1C2-W163X改変体の解析を進め、そこから得られた知見をもとに、大きな開確率を有する新たな高感度チャネルロドプシンを作製し、培養細胞に発現させた改変体に対して、whole-cell patch clampを行い、光強度と光照射時間との関係や、活性化の波長等の解析を行うとともに、神経細胞をコントロールするツールとしての最適化を目指す。
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