2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J09695
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福田 真人 東京大学, 人文学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 幕末維新 / 貨幣 / 金融政策 / 大隈重信 / 井上馨 / 銭貨 / 通貨圏 / 公文録 |
Outline of Annual Research Achievements |
DC1採用2年目であった本年度は学会などで研究報告をいくつか行い、自身の研究に対し有益な批判を受けることができた。学内のみならず、5月には社会経済史学会大会、11月には史学会大会、1月には貨幣史研究会など学外においてそれぞれ研究発表を行った。自身元来のテーマではある幕末から明治期にかけての銭貨について、それぞれ内容・時期などを変えながら研究発表を行った。 社会経済史学会大会においては幕末期を中心に扱い、議論の軸に銭貨価格を据えることで、本年度以前の研究の論理を再構成しつつ、数量経済史などの連関も図りながら、小額貨幣の実質価格が上昇したなどの主張を展開した。この研究については、その後学会などでの批判を受けて、加筆修正を行いつつ、投稿準備中である。 また史学会大会においてはDC1採用後に研究を始めた明治期についても、研究報告を行った。この際通貨圏という視角から議論を展開し、当時の日本の通貨圏が清の通貨圏と実態面で重複していたと論じた。井上馨大蔵大輔は政策的にこれを分断しようとしていたのに対し、大隈重信大蔵卿は積極的に日本銭の輸出を図ったと主張した。この報告を拡張した貨幣史研究会報告においては、国内流通と国際流通を対比しながら、国内市場における統合が海外市場における統合に比べ一概に進んでいたとは言えないとした。 こうした諸発表に対し、未発表の研究として、本年度は研究対象を従来分析が及んでいなかった明治10年代にも拡張することができた。特に財政的問題や予算編成を中心にその過程や内容を分析し、紙幣増発及び対外支出と正貨支出問題について検討している。 さらに、本年度は人文情報学について、Tokyo Digital Historyに参加し、プログラミングを学習するとともに、こうした技術を歴史研究へと活用する手法について研究している。こうした経験が今後の研究の進展に効用をもたらすことを期待したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究予定では本年度は「貨幣政策」について、検討することとなっていた。実際本年度は大阪や長崎で史料調査を行い、収集した史料などを分析することで、実際に井上財政・大隈財政期を中心に、上述したような具体的な貨幣政策を明らかにすることができた。 こうした研究の過程で、当初想定していなかった政治外交史やアジア史、日本中世史、人文情報学といった周辺分野との関連が深まめることができ、研究の幅が広がった。例えば、外国史や日本中世史の研究者からアドバイスを受けて、新たな知覚を得ることができた。また貨幣政策を分析する上で基礎研究となる人文情報学的研究を行うことができた。こうした成果は当初想定していたものを上回った。 研究発表については、口頭発表は十分に行うことができたものの、逆にその準備に追われ文章化が遅れているので、次年度の課題とする。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに比べ次年度は執筆に力点を入れ、研究成果を精力的に公開していくこととしたい。また分析の点では今年度以降研究を本格化した明治10年代について引き続き調査し、末期大隈財政について分析を深めていきたい。なお、情報人文学分野の成果についても執筆や国際学会での報告を検討している。
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