2016 Fiscal Year Annual Research Report
廃炉措置における二光子放出型核種の動的放射線イメージングシステムの開発
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16J09909
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉原 有里 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 二光子同時計測ガンマ線イメージング法 / 電子トラッキングコンプトンカメラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究目的は、2011年3月11日の東日本大震災に伴い福島第一原子力発電所の事故により発生した燃料デブリの除去のため、高濃度で汚染された建屋内の放射性物質の可視化である。事故により飛散した放射性物質は無数にあるため、本研究では、二光子放出型核種を対象にし、リアルタイム計測を行いつつ対象核種を探索する動的放射線イメージング手法の確立を目指している。 そのために、動的放射線イメージング手法のための半導体検出器の設計や二光子放出型核種に対する再構成手法の確立を予定している。 一年目に当たる今年度は、当ガンマ線イメージ手法開発の初期段階として、検出器の初期開発を行った。検出器材料については、開発の前に当初から予定していた化合物半導体の他の物質についても再度検討を行い、シリコンや臭化タリウムの有効性もあることから、これらの検出器の処理回路やファームウェアの設計に取り組んだ。 建屋内は高線量率であるため、バックグランド計数率を落とすための二光子同時検出法の原理検証としてモンテカルロシミュレーションを行い、6月のスウェーデンの国際学会(Imaging2016)にて口頭発表を行い、現在プロシーディングの提出、さらに二光子同時計数を用いたコンプトンイメージングについて、実機の初期動作検証結果を9月の国内学会(応用物理学会)にて、口頭発表した。 同時に、アーチファクトが大きくイメージの雑音が大きいというコンプトンイメージングの欠点を克服するため、電子トラッキング型検出器の実機の開発を行い、9月にイタリアでポスター発表を行った。さらに、電子トラッキングについてさらなる研究を行うために、アメリカのローレンスバークレー国立研究所にて、当検出器の読出しプログラムや電子トラッキングの再構成方法について改善を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、検出器に用いる半導体検出器として、臭化タリウムなどの新しい化合物半導体を含めて評価及び検出器材料の検討を行うことができた。評価した結果から、シリコン半導体検出器を選定し、読出し用ファームウェアの設計を行い、研究成果としてはじめの第一歩が得られた。また、二光子同時計測法(申請書内の「同時検出法」)の原理検証を行い、学会発表を行いつつ、実機を用いた原理検証を進められ、研究のマイルストーンを築くことができた。 さらに、アーチファクトが大きくイメージの雑音が大きいというコンプトンイメージングの欠点を克服するため、本年度は幸運にも、リーディング大学院より海外渡航に関して経済的支援を受けることができた関係から、アメリカのローレンスバークレー国立研究所と半年間、電子トラッキング型検出器の実機の開発について共同研究を行うことができた。これにより、実機の読出しノイズの低減やファームウェアの抜本的な見直しにより、実用の可能性を大きく切り開いた。電子トラッキングに関しては、次年度以降にも継続的に取り込むことで、本計画で予定している検出法に組み込み、より高精度なリアルタイムイメージングが可能になると考える。 また、本年度に予定していた検出器の行動計画については、知見や議論を重ねてはいるが、当初の予定通りには進行しておらず、次年度以降の計画を見直しを行う予定である。 そのような項目を踏まえ、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進として、研究計画通り、今年度にはシリコン半導体を用いた実機の完全実装と、それを用いたフィールドでの計測を予定している。またその原理的なところの追求を、解析及びシミュレーションの二つのアプローチから検証し、本研究の潜在的な応用などを見据えて研究を進めていきたい。 また遅れをとっている検出器の行動計画の作成などについては、日本原子力研究開発機構(JAEA)などとの議論を重ね、構築していきたいと考える。 いずれもマイルストーンとして、結果が得られれば国内・国際学会での発表を予定している。これにより、研究の計画性が高くなるとともに、研究の透明性が出て、最終的に良い研究成果が得られるものと考える。
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Research Products
(4 results)