2017 Fiscal Year Annual Research Report
集中瞑想および洞察瞑想が感情調整に与える効果とその神経基盤の解明
Project/Area Number |
16J10093
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤野 正寛 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | マインドフルネス / 集中瞑想 / 洞察瞑想 / fMRI / 機能的結合性 / 注意バイアス |
Outline of Annual Research Achievements |
マインドフルネス瞑想は、今この瞬間に生じている経験に気づき、反応したり判断したりすることなく、注意をとどめるための瞑想法で、集中力を高める集中瞑想と、観察力を高める洞察瞑想の2種類の瞑想技法から構成されている。近年、この瞑想法によって心身の健康や幸福感が高まることが示されるなかで、2種類の瞑想技法を組み合わせた、様々な心理療法の開発が進められている。そこで、安全かつ効果的な心理療法を開発するために、2種類の瞑想技法の神経基盤や作用機序の解明が求められている。 本研究では、fMRIおよび認知課題を用いて、2種類の瞑想技法の神経基盤や作用機序を解明することを目的としている。本年度は、1つ目に、神経基盤の解明研究を継続して実施した。研究では、瞑想実践者の集中瞑想時および洞察瞑想時の機能的結合性を検討するための追加データを取得した。その結果、集中瞑想時に腹側線条体と視覚野・脳梁膨大後部皮質との間の結合性が増加する一方で、洞察瞑想時にこの結合性が減少した。これらの結果により、集中瞑想では意図的な注意制御の関与が高まる一方で、洞察瞑想では意図的な注意制御や自伝的な記憶の関与が低下するという仮説を支持することができた。 2つ目に、作用機序の解明研究を実施した。研究では、初めに、30分の介入インストラクションを開発した。その上で、非瞑想実践者に対する集中瞑想と洞察瞑想の短期介入が、表情への注意バイアスに与える影響を検討した。その結果、対照群では怒り顔に対して注意バイアスが生じていたが、洞察瞑想群では笑顔に対して注意バイアスが生じた。これに対して、集中瞑想群では注意バイアスが生じなかった。これらの結果は、マインドフルネス瞑想の中でも、洞察瞑想が、笑顔に対する注意バイアスを通じて、幸福感に影響を与えている可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、瞑想実践者を対象としたfMRIデータの追加取得および追加解析を実施し、集中瞑想と洞察瞑想の神経基盤に関する、より整合性のとれた知見を得ることができた。さらに、それらの知見をとりまとめて、英文科学誌への投稿・査読作業まで進むことができた。 また、介入研究のための日本語版の短期介入インストラクションを開発し、認知課題を用いることで、集中瞑想と洞察瞑想の作用機序に関する知見を得ることができた。 これらのことから、本研究は、集中瞑想と洞察瞑想の神経基盤および作用機序を解明するという当初の予定どおり、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、神経基盤の解明研究に関しては、fMRIと新たな認知課題を用いて、瞑想実践者を対象として、集中瞑想と洞察瞑想が感情調整能力に与える影響を検討する予定である。 また、作用機序の解明研究に関しては、介入インストラクションと新たな認知課題を用いて、集中瞑想で注意バイアスが生じなかった背後にある作用機序と、洞察瞑想で笑顔に対する注意バイアスが生じた背後にある作用機序を解明する予定である。
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Research Products
(6 results)