2016 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の農村女子教育に関する史的研究―「娘」世代に着目して―
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16J10350
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
徳山 倫子 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 女子教育 / 農村女性 / ジェンダー / 実業補習学校 / 青年学校 / 大阪府豊能郡 / 高等女学校 / 裁縫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代日本の農村の「娘」たちが受けた教育について実証的に明らかにし、それが農村女性の社会的ありようにいかなる変化をもたらしたかを検討する歴史研究である。本年度の成果は以下の4点に要約される。 (1)雑誌『補習教育』・『青年教育』における女子教育についての記事の内容分析:同雑誌は文部省構内実業補習教育研究会が発行した実業補習学校・青年学校教員向けの月刊誌である。同雑誌に掲載された教員による投稿記事を分析し、1920-30年代の実業補習学校・青年学校教員の指導思想とその実践についての分析を行った。 (2)1940年代の女子青年学校卒業生への聞き取り調査:大阪府豊能郡歌垣村に設置されていた能勢高等実践女学校卒業生にインタビューを行った。旧教育制度下の青年学校についての聞き取りを目的としていたが、新制高等学校への移行期における地域住民の対応についても知見を得られ、戦後の農村女子教育史の解明にも繋がる成果となった。 (3)都市近郊農村における女子青年学校の学校「昇格」運動についての事例分析:大阪府豊能郡池田町に設置されていた池田技芸女学校における高等女学校への学校「昇格」問題について、教員による運動のみでなく、「裁縫」を中心とした教育内容の変化の過程や生徒層に着目しながら検討した。高等女学校への「昇格」についてはいくつかの先行研究があるが、青年学校からの「昇格」についてはこれまで検討されておらず、女子教育史における一連の研究成果に新たな知見を加えるものとなった。 (4)農会による女学校についての事例分析:千葉県農会立家政女学校についての事例分析を行った。農会による女子教育については先行研究では着目されておらず、農村女子教育史に関する新たな知見を加えるものとなった。 これらの成果はそれぞれ学会・研究会で発表済みであり、来年度以降査読付き論文として学会誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時においては、初年度の予定としては上記(1)、(2)を行う予定であったが、(3)、(4)の内容も加えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、初年度の成果を査読付き論文として学会誌に投稿する。また、『農家経済調査簿』の分析を行い、裁縫に多大な時間を費やしていた農家の「娘」たちの家内労働について、「母」・「嫁」と比較するとともに、学歴による労働内容の差異についても検討を行う予定である。
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Research Products
(3 results)