2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J10516
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安倍 里美 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
|
Keywords | 理由 / 価値 / 義務 / メタ倫理学 / 規範性 / 正当化可能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は平成29年9月まで、理由と評価的な規範的事実の関係を明らかにすることを目的とした研究を行った。T.M.スキャンロンのバックパッシング理論を主題とし、その擁護を目指した。まず、「価値と理由が双条件的関係にないような反例を挙げる議論に対して、非派生的理由と派生的理由の区別を考慮すれば、この議論には、バックパッシング理論を掘り崩す力がないことが明らかになることを示した。さらに、濃い概念の外延が特定の道徳的観点を身につけた人物にしか特定できないことと、バックパッシング理論は両立可能であることと、規範的なものを規範的たらしめるものは何かという問題はバックパッシング理論が固有に説明責任を負うものではないことを論じ、価値についての事実を不当に削ぎ落とすことなく評価的なものを理由に還元できることを示した。 平成29年10月から、平成30年3月にかけて取り組んだのは、理由の規範性によって、義務の規範性を十分に説明することはできるのかという問題であった。検討の対象としたのは、スキャンロンとJ.ラズによる理由と義務についての議論であった。そして、彼らの議論は、ともに、規範的な理由と正当化理由の区別をしておらず、理由の規範性によって義務を説明する理論を提出するには至っていないことを明らかにした。 以上の平成29年度の研究により明らかになったのは、以下の3点である。(1)理由の規範性を価値の規範性と同一視する立場は擁護可能である。(2)ただし、この立場から説明可能であるのは、通常我々が義務として理解している行為規則の一部であること。(3)多くの説明されないまま残された義務は、むしろ理由の規範性によってではなく、理由の規範性に基礎付けられた正当化に関わる規範性によって説明するのがふさわしいと考えられること。
|
Research Progress Status |
29年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Strategy for Future Research Activity |
29年度が最終年度であるため、記入しない。
|