2016 Fiscal Year Annual Research Report
有用嫌気性細菌群の集積化技術の開発によるメタン発酵処理の有機溶媒含有排水への展開
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16J10744
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
段下 剛志 長岡技術科学大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | メタン発酵処理 / 電子系産業排水 / 2-propanol |
Outline of Annual Research Achievements |
メタン発酵法は省・創エネルギーな排水処理技術であるが、適用範囲は易分解性の有機物を含む中温域の排水に限定されている。本研究は難分解性の化学物質を含有し常温で排出される電子産業排水に無加温メタン発酵処理を適用すること目的とし、今年度は以下の3点を軸として研究を遂行した。 1)ラボスケールリアクターによる2-propanolを基質とした連続排水処理試験;自己造粒型(UASB)リアクターによる2-propanolを主有機物源とする合成排水をHRT4時間、処理温度18~19℃の低水温条件で実施し、排水処理性能を評価した。リアクターへの植種源には酢酸等、易分解性の有機物源をメタン化可能なグラニュール汚泥を用いた。2-propanolの混合濃度は段階的に増加させながら運転した。最終的に2-propanol濃度90%(COD基準)の条件においても安定したメタン発酵処理を達成した。 2)メタン発酵条件下における2-propanolの分解経路の推定:バイアル試験によって2-propanolの分解経路の推定を行った。本バイアル試験では、メタン生成古細菌に対する特異的な反応阻害剤を添加する系と添加しない系で2-propanolの分解特性を調査した。反応阻害剤を加えた系では2-propanolの分解が停止し、メタン生成古細菌が2-propanolの分解に直接関与していると考えられた。 3)分子生物学的アプローチによる2-propanol分解を担う細菌群の推定;植種に用いた汚泥と2-propanolを十分にメタン化可能なリアクターの保持汚泥において、メタン生成古細菌に関して、16S rRNA遺伝子に基づくクローニング解析を実施し、細菌叢の変化を調査した。解析の結果、水素資化性のメタン生成古細菌に変化が見られ、2-propanolの分解を担う有用細菌群が集積化されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機溶媒(2-propanol)を含む排水へのメタン発酵処理の適用拡大に向けて、初年度は以下の項目に研究を推進した。1)ラボスケールリアクターによる2-propanolを基質とした嫌気性集積培養試験 2)メタン発酵条件下2-propanolの分解経路の推定 3)分子生物学的アプローチによる2-propanol分解を担う細菌群の推定 上記3項目に関して、嫌気性集積培養試験が順調に進行し(1))、分解経路の推定に至るデータを取得することもできた(2))。また、2-propanolの分解を担う細菌群が集積化していることを裏付ける結果として、2-propanol分解に伴う細菌叢の変化も観察できた(3))。ただし本項目(3))関しては、さらなる詳細な解析が必要であると考えている。 以上の理由から総合的に、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。また、得られた成果は論文執筆に値するものであると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は2-propanolの分解を担う細菌群の推定を得られたデータから詳細に解析するとともに、電子系産業排水に含まれる化学物質として広く知られている水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)に関しても以下の研究により分解特性の評価も行う。 ・2-propanolおよびTMAHの混合排水による嫌気性集積培養(連続排水処理試験)の実施 ・TMAHの混合が、排水処理装置内に保持されているグラニュール汚泥の性状に与える影響の評価 ・回分的なバイアル試験によるTMAHの分解特性の評価
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