2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J10959
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
福田 莉紗 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2020-03-31
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Keywords | 考古学 / エジプト / テーベ / 岩窟墓 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究期間を通して、当初予定していた中王国時代に限定せず、エジプト史を通したテーベの岩窟墓の再利用の実態を把握し、知識を蓄積していくことが必須であることが判明した。よって、平成29年度は第三中間期以降の岩窟墓の再利用の実態を明らかにする上で、必要不可欠であるものの後進的であった年代決定に有益な遺物研究を実施することにした。 平成30年度は引き続きこの遺物研究を進めた。第25王朝は、エジプトがヌビア人によって支配された時代である。地理的にもヌビアと近しいテーベ・ネクロポリスには、ヌビア人の埋葬も確認されている。副葬品等はエジプト人と異なる様相を呈していることから、岩窟墓の造営、あるいは再利用にもエジプト人とヌビア人では異なる可能性もある。本年度の遺物研究を通して、エジプトにおけるヌビア人の埋葬の特徴や埋葬に対する志向を明らかにすることができた。これによって、末期王朝時代の岩窟墓造営を考察するための一資料を得ることができた。 これに加え、本研究の背景となっているテーベ・ネクロポリスの近現代におけるクルナ村の人々による岩窟墓の利用とその後について研究を行った。対象となっている地域は世界文化遺産のコア・エリアであるため、「顕著な普遍的価値」と照らし合わせてユネスコ、エジプト政府、学術団体、そしてクルナ村の人々のクルナ村、つまりテーベ・ネクロポリスに対する見解を比較・分析した。この研究によって、今後のクルナ村、あるいはテーベ・ネクロポリスの保存や活用に関する課題を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は本研究を遂行する際の問題点として指摘した、本研究に不可欠な資料であるものの研究が後進的である岩窟墓の年代決定に有用な遺物研究を継続した。これによって岩窟墓の造営や再利用を分析・考察する上で有用な研究成果を得ることができた。 また、本研究の背景となった近現代の人々による岩窟墓の利用とその後について研究を行ったことは、岩窟墓造営当時から現代に至るまでの岩窟墓の利用や再利用の変遷と現状を捉えただけでなく、本研究の意義を深め、今後の研究指針を得るものとなった。 平成29~30年度は中断期間があったため、上記の成果の研究発表には至っていないが、研究の進展は確実であることから、進捗状況の区分は「おおむね順調に進展している」であると判断した。研究成果の発表は、今後実施していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究期間を通して、当初予定していた中王国時代に限定せず、エジプト史を通したテーベの岩窟墓の再利用の実態を把握し、知識を蓄積していくことが今後必須であることが判明した。平成29年度は新王国時代以降の岩窟墓の再利用の実態を明らかにする上で必要不可欠ではあるものの研究の遅延が看取された、年代決定の鍵である遺物研究を実施した。平成30年度は、近現代のテーベ・ネクロポリスについての研究動向をまとめ、前年度に引き続き年代決定に有益な遺物研究も行った。年代決定に有益な遺物は複数存在する。よって、本年度もこれに該当する遺物研究を主に文献調査によって進めていく。また、昨年度に予定していたものの、諸事情により取り組むことができなかった新王国時代以降の岩窟墓の再利用の実態の把握を、本年度中に行う予定である。これについては文献調査に加え、現地で実施する学術調査への参加によって推進する。 予定している論文の投稿と学会発表は、採用期間が終了する7月までに発行完了や学会開催がなされるものはない。よって採用期間終了後にはなるが、本研究によって得られた研究成果の発表は、今後順次行っていく予定である。
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