2016 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋分化効率の向上に寄与する小胞体ストレスと応答分子の機能解明
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16J11238
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
徳武 優佳子 信州大学, 総合工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 骨格筋分化 / IRE1-XBP1 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋サテライト細胞の分化過程において、XBP1、ATF4、CHOP、ATF6といったUPR関連因子の遺伝子発現が高くなることを明らかにした。特に、XBP1の遺伝子発現増加は他の因子に比べて顕著であり、未分化時と比べて8~10倍近く増加していた。また、XBP1の遺伝子発現は分化後期(分化誘導4日目)に高くなることが示され、分化中期(分化誘導2日目)に発現がピークとなる他のUPR関連因子とは異なる発現挙動を有することが明らかになった。この結果は、XBP1が他のUPR関連因子とは独立し、骨格筋分化に関わる何らかの機能を持つ可能性を示唆している。 XBP1は小胞体膜にあるストレスセンサー分子であるIRE1を介して活性化されることが知られていることから、C2C12細胞にIRE1-shRNA導入したIRE1ノックダウン筋細胞株を作製し解析した結果、IRE1ノックダウン細胞株では分化誘導を行っても筋管形成が生じないことが明らかとなった。 IRE1のRNase活性を特異的に阻害する薬剤(STF-083010)およびKinase活性を阻害する薬剤(APY-29)をそれぞれC2C12細胞株に添加し、分化に及ぼす影響を解析した。その結果、STF-083010を添加した細胞では筋管形成が阻害された一方で、APY-29を添加した細胞では筋管形成の阻害が起こらなかった。IRE1のRNase活性が分化において必須であることが示され、IRE1はXBP1を介して骨格筋分化に関与していることがより明確になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小胞体ストレス応答機構、特にIRE1-XBP1経路が骨格筋分化に必要な経路であることを見出した。今後は、XBP1下流の分子経路を明らかにするとともに、分化誘導刺激後における生細胞と死細胞における、これら経路の関わりを明らかにする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度において、筋サテライト細胞の分化過程にはXBP1発現の著しい増加が見られること、加えて、IRE1のRNase機能を介したXBP1活性化が骨格筋分化に必須であることを解明した。しかし、XBP1がどのようにして骨格筋分化を促進するのかについて具体的な作用機序はわかっていない。さらに、骨格筋分化を促進する効果のある軽微な小胞体ストレス刺激を与えた際、筋細胞が獲得する形質やストレス応答機構の変化も依然として不明なままである。 作用機序の検討では、FOXO1という分子に着目し検討する。FOXO1は骨格筋において発現が高く、過去の知見より骨格筋分化と密接な関係があることが知られている。近年、FOXO1とXBP1の間には物理的相互作用があることが見出され、XBP1がFOXO1の発現調節に寄与するという興味深い知見が報告されている。よって、我々は骨格筋分化過程におけるXBP1-FOXO1の相互作用の有無について解析していく。 さらに分化誘導刺激後の生存・死細胞の間でIRE1-XBP1活性を比較し、同機構が分化誘導刺激後の生存細胞の筋分化効率に及ぼす効果を解明する
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