2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study of chambers in tumulus by muon radiography
Project/Area Number |
16J11883
|
Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
石黒 勝己 奈良県立橿原考古学研究所, 指導研究員室, 特別研究員(PD) (60766377)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
|
Keywords | 大和の考古学 / ミューオンラジオグラフィー / 古墳 / 宇宙線 / 放射線 / 3次元計測 / 探査 / 古墳時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
春日古墳(奈良県斑鳩町)を対象にしたミューオンラジオグラフィーに関して、画像の分解能を上げるために計測期間を3ヶ月間に延ばして観測を行った。さらに画像化の方法も最適化し、春日古墳墳丘内部画像の作成を行った。画像には埋葬施設による空洞と思われる領域があり、この評価を行うために、シミュレーションを行って古墳内構造の具体的な検討をした。墳丘の外形測量データに対し、色々な大きさ、方向の埋葬施設を墳丘内部に仮定してコンピューター上でミューオン計測を再現、どのような空洞を仮定したときに計測データと最も合うかを検討することで是を行った。結果として 古墳中心部分、南南西からに北北東方向に長さ6.1±0.5m,高さ2.0m,幅1.8mの空洞を想定した場合に最もデータと合うものであった。この結果は考古学者によって構成される春日古墳調査検討委員会および物理学の国際会議であるICMaSS2017で発表し高く評価された。 また、観測に際し原子核乾板を固定して設置する治具の開発をした。野外にフィルム(原子核乾板)を垂直に縦置きして長期間固定する必要があるがフィルム取り換えが容易にできることも必要である(放射線の蓄積などによってフィルムが劣化することによる)。これに対応する冶具の設計としてレール加工をした冶具ににフィルムを貼り付けたアルミ板を差し込む構造を考案し製造した。冶具は 野外に土地の改変無く設置でき、斜面にも設置できるなど古墳特有の要求を満たすものになっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度から計測を行っている春日古墳(奈良県生駒郡)の宇宙線ミューオンによる墳丘内部レントゲン写真の撮像を継続し、ミューオンデータ量を増やすと共に画像化の解析手法をポリッシュアップさせてより解像度の高い画像作成を行った。さらに測量した古墳墳丘外部の形状を用いてミューオンによる内部撮像のシミュレーションを行い、どのような形状の埋葬施設による空洞が合った場合データに最も良く合うかの検討を行った。見積もった形状は長さ6.1±0.5m,高さ2.0m,幅1.8mで、南北に近い方向に伸びる空洞である。 この結果は春日古墳調査検討委員会で発表報告し、今後の発掘計画に生かしていったり、考古学研究に生かしていくことが話し合われた。 春日古墳調査検討委員の考古学者達から非常に高い評価を受けることが出来、 高い研究の成果を得たと言ってよい。同日に報道発表も行い広く報道された。また、桜井市の古墳を対象に副室のミューオン調査を開始することが出来た。既に春日古墳での調査と同量程度のミューオンデータ蓄積が出来ており、今後の解析が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず春日古墳を対象に作成した内部画像データを用いて考古学的な比較研究を行う。特に藤ノ木古墳などが近接して存在しているため石室の方向や墳丘密度の比較などを行いたい。藤ノ木古墳は古墳時代後期の古墳であるが豪華な埋葬品が多量出土している特異な古墳である。この解明に役立てたい。次に2017年度からフィルムの設置を開始している桜井市の古墳に関して観測を継続し、 内部画像解析を行う。この古墳は箸墓古墳の後につづく竪穴式石室を持つ大型古墳であるので先ずは後円部中心部の埋葬施設がどのように検出されるのかを確かめたい。竪穴式石室のミューオンラジオグラフィーによる観測ははじめてであるが観測点からの仰角が高いため観測がし易い。一方で横穴式石室に比べて石室規模が小さく地表近くに空洞が存在することで墳丘外形の影響を受けやすい難点がある。墳丘の測量結果を利用したシミュレーションを行ってこれらの影響を見積りながら構造解析を行う。さらに、副室が建設されている可能性が考えられるのでその判定を目指して解析を行う。第三に箸墓古墳を対象に研究を行う。箸墓古墳は大型前方後円墳としては最初期の古墳で古墳全体に関して未知の内容を含むためミューオンラジオグラフィーによってデータ取得を行う。最上部に石積みの段が存在していると言われているため、先ずは全体をおおまかな部分ごとにわけて密度測定する。その後、後円部中心部の高い位置、前方部端の部分などのポイントを詳細に観測したい。
|
Research Products
(6 results)