2018 Fiscal Year Annual Research Report
ハムシ類の水生植物利用への進化における腸内微生物群集の役割
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16J40021
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
池田 香代子 (福森 香代子) 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 特別研究員(RPD) (00644535)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2020-03-31
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Keywords | ハムシ / 共生細菌 / 分子系統解析 / ゲノム決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、カメノコハムシ亜科およびサルハムシ亜科がもつ共生細菌の昆虫体内での局在や形態を電子顕微鏡写真やFISH法により可視化した。カメノコハムシ亜科の共生細菌は桿状および不定形の形態をしており、一方でサルハムシ亜科の共生細菌はロゼット状の形態をしていることが確認された。 また、昨年度に引き続きカメノコハムシ亜科がもつ共生細菌の多様性と宿主との関係を解析した。多くの種で雌雄ともに前腸と中腸の間に2個または4個の小さな共生器官が見られたが、数種からは共生器官が見いだされなかった。雌の卵巣の近傍に次世代への共生細菌伝達に関わると思われる器官を同定した。共生細菌とカメノコハムシ類それぞれにおいて3つの遺伝子領域の塩基配列をもとに系統樹を作成したところ、共生細菌の系統関係は宿主カメノコハムシ類の系統関係と一致する傾向にあり、両者の共進化関係が示唆された。多くの種で高度に保存され、器官レベルの特殊化も見られることから、この共生細菌はカメノコハムシ類において重要な生理機能をもつ可能性が示唆された。 さらに、カメノコハムシ亜科、サルハムシ亜科、およびネクイハムシ亜科の8種の昆虫より摘出した共生器官からDNAを抽出し、共生細菌の全ゲノム配列を決定した。共生細菌のゲノム長は、カメノコハムシ亜科が約25万塩基対、サルハムシ亜科が約18万塩基対、ネクイハムシ亜科が約45万塩基対であったことから、ハムシ類の共生細菌は極めて小さいゲノムであることが解明された。カメノコハムシ亜科の一種では、共生細菌が植物細胞壁の主要成分であるペクチンの分解酵素の生産に特化することが解明されており、サルハムシ亜科およびネクイハムシ亜科においても共生細菌の生物機能を推定中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度に予定していた、ハムシ類の共生細菌のゲノム配列の決定をおおむね終了することができた。また、カメノコハムシ亜科やサルハムシ亜科における共生細菌の形態や昆虫体内における局在を明らかにすることができた。さらに、カメノコハムシ亜科の共生細菌の多様性に関する論文の執筆も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、ネクイハムシ亜科およびサルハムシ亜科がもつ共生細菌の多様性と宿主との共進化関係についての解析を進める予定である。また、他の多様なハムシ類がもつ新規の共生細菌を探索し、その生物機能を推定する。カメノコハムシ亜科の幼虫が、卵から共生細菌をどのように獲得して共生器官内に保持するのかをFISH法などを用いて明らかにする。
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Research Products
(2 results)