2018 Fiscal Year Annual Research Report
リポソームを用いたエキソソーム内microRNAの高感度検出法の開発
Project/Area Number |
16J40215
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
津金 麻実子 中央大学, 理工学部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2016-07-27 – 2020-03-31
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Keywords | リポソーム / エキソソーム / マイクロRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの血漿から抽出したエキソソームの標準サンプルを用いて、リポソームとの膜融合と、リポソーム内でエキソソーム含有RNAの検出を試みた。エキソソームの膜を蛍光染色し、融合によってリポソーム膜が蛍光を示すことで融合の有無を確認できるようにした。TaqManプローブを含むRT-PCRの反応液を内封したリポソームと膜染色したエキソソームを混合し、電気刺激により融合させた後、RT-PCRした。その結果、電気融合後に膜が染色されたリポソームがいくつか確認され、さらにその一部はRT-PCR後に内部でrRNAの増幅を示すTaqManプローブ由来のFAMの蛍光が観察された。よって、リポソームを用いてエキソソーム内のrRNAの検出に成功した。 これまではリポソーム内でrRNAやmRNAのRT-PCRによる検出を試みた。本研究課題の最終目標であるmicroRNAの検出については、現在、逆転写反応(RT)とPCRを1つのチューブ内で連続的に行える反応試薬のキットは販売されていない。そこで先行研究の論文を参考にmicroRNAの等温増幅法を試みた。これはプライマー、DNAポリメラーゼ、制限酵素を用いて標的microRNAを等温(37℃、55℃)で増幅し、蛍光プローブ(分子ビーコン、SYBR GreenⅠ)で検出する方法である。使用する酵素、蛍光プローブ、反応温度の違いにより4種類の方法を検討したが、最も検出感度の高かった方法を採用することとした。microRNAであるlet-7aと酵素などの反応試薬をリポソームに内封し、55℃で反応させるとリポソーム内でSYBR GreenⅠによる蛍光が蛍光顕微鏡およびフローサイトメーターで確認できた。よって、リポソーム内でのmicroRNAの増幅と検出が可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに、エキソソームとリポソームの融合を模擬して、RT-PCRに必要な酵素を内封したリポソーム、RNAを内封したリポソームという2種類のリポソームを使用して、膜融合やRT-PCRによるRNAの検出が可能であるという結果を得た。今年度は実際にヒトの血漿から抽出したエキソソームサンプルを用いて、リポソームとの融合とリポソーム内でエキソソーム含有RNAの検出に成功した。 さらにこれまではRT-PCRによるmRNAやrRNAの検出を行っていたが、microRNAの検出を目指して、microRNAの等温増幅法の測定条件を検討し、microRNAであるlet-7aのリポソーム内における増幅と蛍光検出が達成できた。55℃による等温増幅はRT-PCRのように高温(95℃)で処理する必要がないため、リポソームの崩壊も回避できる利点がある。 融合効率の向上など改善の余地はあるが、当初の研究計画であるRNAを増幅する試薬を内包したリポソームをリン脂質により作製、リポソームとエキソソームを直接融合させてエキソソーム中のmicroRNAをリポソームに移行、リポソーム内でRNAを増幅、生成物の蛍光強度をイメージングすることで特定のmicroRNAを検出という一連の課題を着実に達成しており、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
エキソソームとリポソームの膜融合は電気融合やその他の方法を検討したが、どの方法でも融合効率が低かった。電気刺激やその他の融合剤によりリポソームが破壊される影響があるため、リポソームの脂質組成を検討する。また、融合時におけるリポソームとエキソソームの接触を向上させ、融合効率を上げるためのマイクロチャンバーデバイスの開発を行う。 microRNAの等温増幅反応がリポソーム内で進行することが確認できたので、等温増幅反応試薬内封リポソームとエキソソームを融合させ、リポソーム内でエキソソーム由来microRNAの検出を試み、最適な融合・測定条件を調査する。
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