2016 Fiscal Year Research-status Report
変化係数モデルの多変量化と北東大西洋のミンククジラの身体状況データへの適用
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16K00048
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山村 麻理子 広島大学, 教育学研究科, 講師 (60525343)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤越 康祝 広島大学, 理学研究科, 名誉教授 (40033849)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 正準相関変化係数モデル / 多次元地理経時データ / 変数選択 / ミンククジラ |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の変化係数モデルでは応答変数を1つしか用いることができなかった.しかしながら,ビッグデータが現れた近年では,応答変数が1つではなく複数用いたい状況がよく見受けられる.何故ならば,IT環境やパソコンの性能が上がり,容量の大きいデータの収集が一般的に広く行われるようになったことで,応答変数も1つに絞る必要がなく,必要と考えられる限りいくつでも収集できるからである.この状況をふまえ,今年度は多変量解析における正準相関分析を変化係数モデルに加えることで,複数の応答変数に対応できる正準相関変化係数モデルの統計理論を完成させた.完成したモデルを,ノルウェー国立海洋学研究所が保持する北大西洋のミンククジラの身体状況を観測したデータに応用した.応答変数はミンククジラの体長と2ヶ所の脂肪厚の3つで,説明変数は緯度経度,年,カレンダー日数(1月1日を1として,365もしくは閏年の場合の366まで日数を数えあげたもの)である.ミンククジラはノルウェー近海の北大西洋で,冬の間,シシャモ等を食べて栄養を蓄積させる.それが近年,生態系の変化によって,十分に栄養を取れていないことが懸念されており,これを今回の分析で確認したかった.分析結果から,年々,ミンククジラの脂肪厚が減少していることが分かり,つまり,蓄えられている栄養の量が年々減少している様子が把握できた.1年を通じては,カレンダー日数が大きくなるほど,脂肪厚も大きくなっており,北大西洋で栄養を蓄えている様子が見られた.また,オスとメスのミンククジラの生態が違っている結果がみられ,何故異なるかについて調べる課題が残った.以上の結果を論文にし,イギリスでの学会と筑波大学で発表している.発表で他の研究者から,大変有意義な指摘を受け,分析の方法の改善が考えられ,さらなる研究実績になると期待している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
28年度は正準相関変化係数モデルのモデル作成と,有意性検定と区間推定を行うことを予定していた.しかし,ミンククジラの実データ解析を行うにあたり,区間推定よりも,29年度に予定していた説明変数の変数選択の方が重要になったため,変数選択を先に行った.予定とは異なったものの,正準相関変化係数モデルに関する2つの課題が完了しており順調に研究は進んでいるといえる.さらに,研究を進めるとミンククジラデータへの応用で,今回提案した正準相関変化係数モデルが十分に分析を行えていないと思われる部分が現れた.何故,分析が十分でないかについての理由に目処が立ち,克服した新たな正準相関変化係数モデルを作成したいと考えている.どの様にモデルを改善するかについては,具体的な方法が思いついている.ミンククジラデータの分析結果については,先に十分でないと伝えたものの,非常に納得できる分かりやすい結果が現れた.1点新たな試みがあり,今回初めてオスとメスのミンククジラを分けて分析を行った.その結果,双方の分析結果に違いがあることが初めて明らかとなった.この違いが生態として異なるのか,データ収集による問題なのか明らかにすることが課題として残った.課題はノルウェー国立海洋学研究所の研究者と共同で行い,生態学と統計学の双方から考慮する必要がある.29年度に提案したいと考えている新たな正準相関変化係数モデルを適用したり,区間推定や仮設検定を行ったりすることで課題が明らかとなる可能性も考えられる.以上から,28年に予定していた研究の量は消化され,内容としてもより進んだ研究成果を期待され,研究は良い方向で進んでいると感じている.
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は予定していた通りに正準相関変化係数モデルを作成した.そのモデルを実際にミンククジラのデータに応用したところ十分な分析が行えていない可能性を感じた.十分でない理由が研究を進めていくうちに明確になったことから,不十分である部分を改良して,新たな正準相関変化係数モデルを29年度は提案したいと考えている.この際,28年度と同様にミンククジラデータに応用するには変数選択が欠かせない.よって,29年度は改良した正準相関変化係数モデルとその変数選択を統計理論の研究として提案する.一方で,ミンククジラデータの分析結果をこの新たな正準相関変化係数モデルで改め,北大西洋におけるミンククジラの栄養状態の分析を進めることが必要である.28年度では,オスとメスのミンククジラで分析結果が微妙に異なる部分が見られたことから,これらの分析結果が生態の違いによる影響なのか,もしくは統計学的なデータの特徴によるものなのかどうか,ノルウェー国立海洋学研究所と慎重に共同研究を進める必要があり,研究打合せ,学会,シンポジウム,及びセミナー等で研究会を行う予定である.ここまでを29年度に完了する研究としたい.さらに,余裕があれば,今年度提案した正準相関変化係数モデルの区間推定と仮設検定を行う.先述したオスとメスの分析結果の違いはデータの標本数による違いも考えられる.よって,区間推定や仮設検定を行うことで,現れた結果が統計学的に有意であるかどうかを見極める必要がある.以上から,29年度は論文や学会発表などの結果までにはならないとしても,区間推定と仮説検定の研究を進めておく.
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