2017 Fiscal Year Research-status Report
ソフトウェアの論理回路化による知的財産保護に関する研究
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16K00072
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
市川 周一 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70262855)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 難読化 / FPGA / セキュリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は,目標(1)保護レベルの定量化,(2)論理回路化する部分の選択手法,(3)実装を考慮した保護手法,を遂行した.特に目標(3)の成果の一部は国際会議IEEE ISIE 2017に採録され,平成29年6月にエジンバラで発表した. 平成29年度は,目標(1)と(2)を推進するため,LLVMの中間形式IRを難読化するプログラム(A)とIRの複雑度を評価するプログラム(B)について検討した.まず既存手法との比較,また開発労力削減のため,利用可能な既存プログラムを調査した.プログラム(A)については,Obfuscator LLVM (oLLVM)を本研究の枠組みで試験評価し,本研究に利用可能であるか検討した.その結果,oLLVMでソフトウェアおよびハードウェアの難読化が可能であるが,性能・コスト面のオーバヘッドが大きいことが分かった.特にC言語バックエンド(CBE)を用いて難読化C言語プログラムを生成した場合のオーバヘッドが大きい.難読化ハードウェアの生成においては,CBEを経由してC言語から高位合成するかわりに,LLVM IRから難読化ハードウェアを実装する手法が望まれる.プログラム(B)についても,oLLVMと併用することを前提として再検討のうえ開発を進めている. 目標(3)については,ソフトウェアの一部を周辺回路として実装するとソフトウェア実行に比べて4~50倍の実行時間を要することが判明したため(ISIE 2017),本年度は別の手法について検討した.具体的には,C言語記述のソフトプロセッサを用いて,ソフトウェアの一部を関数単位でプロセッサに取り込み,特殊命令として実装する.引数および結果の受け渡し方法に工夫が必要だが,CHStoneの3つの応用について試験的評価が終わった.評価結果はxSIG 2018にて発表予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標(1)保護レベルの定量化については,昨年度に引き続き評価基盤の整備を進め,本年どはoLLVMを利用して難読化ソフトウェア・難読化ハードウェアの定量的評価が可能な段階に達した.試験的評価結果については,電気学会次世代産業システム(IIS)研究会で発表するとともに,電気学会論文誌に投稿中である.ただしLLVM IRを解析して定量指標を計算するプログラム(B)については,oLLVMと併用することを前提に再検討を進めており,引き続き開発中である. 目標(2)論理化する部分の選択手法については,上記プログラム(B)を基に定量的に議論すべきものであるため,プログラム(B)の設計と合わせて検討中である.ただし,論理回路化すべき部分を選択した場合に,その選択に応じて難読化ハードウェアの実装コストや性能に大きな影響が表れることがわかった(ISIE 2017とxSIG 2018で発表).この点は,当初計画で見落としていた要因が新たに明らかになったと評価できる. 目標(3)については,既に昨年度,当初の評価項目を達成済みであるが,本年度は昨年度明らかになった問題点を踏まえて,新たな実装手法について検討評価を行った.プロセッサにソフトウェアの一部を特殊命令として実装するという手法であるが,これはプロセッサの特殊化というべき手法であり,当初計画でH29年度以降にあげた「ハードウェア特殊化の保護手法への適用」に含まれる. 以上の点からみて,目標(1)(2)は当初計画に含まれない各種要因が表れつつあるが実質的進捗があり,目標(3)は予定以上の進捗があったといえる.総合的には,概ね予定通りの進捗であるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
目標(1)と(2)については,H29年度にoLLVMを用いた実装評価方法が確立したことから,プログラム(B)の実装条件が具体的に定まり,今後のプログラム開発が加速されることが予想される.またCBEを経由した実装はオーバヘッドが大きいことが分かったので(H29),高位合成システムを変更してLLVM IRから直接ハードウェア生成する手法を検討する(H30).これによりシステム構成がシンプルかつ効率的になり,論理回路化する部分を選択する際に評価の精度が上がることが予想される. 目標(3)については,H29年度に試みたプロセッサの特殊化手法(ソフトウェアの一部を特殊命令として実装)をさらに発展させる.H29年度はCHStoneの一部(3つ)の応用だけを評価したが,さらに多くの実装で有効性の評価を進める予定である. いずれの目標についても,プログラム(B)を含めたプログラム開発が最優先課題となる.それが進捗すれば,目標(5)現実的な問題への適用も視野に入る.
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Causes of Carryover |
投稿中の学術論文が複数あり,その判定が遅れたために,掲載料の支払いが次年度に持ち越された.2018年5月現在,採録決定済で未払いの論文が2本(いずれも電子情報通信学会)あり,それで約263000円の支払額となり,およそ科研費の持ち越し額に相当する.
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Research Products
(15 results)