2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K00207
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
足立 幾磨 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (80543214)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 感覚間一致 / 言語進化 / 系列処理 / 空間表象 / 比較認知科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、言語ラベルの進化的・発達的基盤の一つの要因として近年注目を浴びている「感覚間一致」に注目し、その進化的起源をあきらかにするため、比較認知科学的研究を実施している。これまでに、チンパンジーを主たる対象主として、以下の感覚間一致を分析してきた。1)社会的順位と空間の感覚間一致、2)系列情報と空間の感覚間一致、3)音の高さと明るさの感覚間一致。本年度は3)の研究を推進した。 これまでにヒトを対象とし実施された研究から、音の高さと明るさの感覚間一致には、高い音の後には明るい色、低い音の後には暗い色に目が向きやすくなる注意バイアスと、中間的な色の見えが音によって変化する知覚バイアス、という二つのメカニズムが存在することが示されてきている。本年度は、昨年度予備実験を行ったこの知覚バイアスの研究をさらに展開した。具体的には、まず、明るさの弁別をバイセクション法をもちいて訓練した。被験体がこの弁別を学習したのちに、干渉刺激として高音、低音を呈示するテストを実施した。その結果、実験をおこなったすべての個体が、中間色の明るさ判断をする際に、高音を聞いた際には明るい色と判断すること、低音を聞いた際には暗い色と判断することがしめされた。この結果はチンパンジーも音の高さと明るさの間の感覚間一致をもつこと、さらに、そのメカニズムとして知覚バイアスがチンパンジーにも存在していることが示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本申請研究は、様々な感覚間一致を分析することで、その進化的起源を探ることを目的としている。本年度も順当に知見を集めている点はあるが、研究を広く展開することができなかったため、やや遅れている、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度も感覚間一致、音象徴について比較認知科学的分析をおこなう。 特に、昨年度予定していながら、音の高さと明るさの感覚間一致の下位メカニズムの研究に変更し実施できなかった、下記の2点を実施する。ただし、選択する感覚感一致や音象徴については、研究の進捗状況、ヒトを対象にした先端研究の動向に応じ柔軟に選択し、包括的に感覚間一致の進化的起源を探求する。 研究1:音の高さと空間感覚の間の感覚間一致を分析する。視覚刺激の種類は特に問題とならないため、通常の見本合わせ課題をもちいる。そのうえで、選択刺激の配置を上下に並べて提示する。干渉刺激として高音・低音、あるいは高音から低音へと移行する下降音やその逆の上昇音などをもちいる。もし、ヒトと同様に高音と空間の上部、低音と空間の下部の間に感覚間一致が生じるのであれば、被検体は高音や上昇音からは、空間上方に、低音や下降音からは空間の下方に注意がシフトしやすくなると考えられ、その方向に正答がある場合は、その逆の場合よりも成績がよくなると考えられる。 研究2:音の大きさ・高さと物体の大きさの感覚間一致を分析する。まず、さまざまな形・大きさをした視覚刺激をもちいて、大小弁別を訓練する。手続きには29年度に知覚バイアスを分析するためにもちいたバイセクション課題をもちいる。その後、干渉刺激として聴覚刺激を提示する。この聴覚刺激には、異なるデシベル数の純音、および高音、低音を用意する。ヒトの場合大きな音・低音は大きさの大きいものと、小さな音・高音は小さなものと結びつくことが知られている。
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Causes of Carryover |
本年度は予定していた海外学会への参加を見合わせたため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(5 results)