2018 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of acoustic characteristics of old violins
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16K00255
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
牧 勝弘 愛知淑徳大学, 人間情報学部, 教授 (50447033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 智治 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (90343186)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 音色 / 空間放射特性 / 時間揺らぎ / 熟練度 / ストラディバリウス / 楽器のランク |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に従い、ストラディバリウスの音色に寄与する可能性の高いストラディバリウス固有の空間的な音響的特徴について、奏者の熟練度の影響も踏まえて総合的に考察した。高い熟練度を持つ奏者の場合、その演奏技術により低いランクの楽器であっても高価な楽器(例えば、ストラディバリウス)の放射特性に近づけることができるものの、放射指向性が強く現れるピーク周波数や、楽曲演奏中に放射方向が大きく変わる周波数は、ストラディバリウスに固有であった。また、これらの周波数は、ストラディバリウスと同年代、およびそれ以前に製作された他のオールドバイオリンとは異なっていた。つまりこれは、ストラディバリウスに固有の音響的特徴が、単に木材の経年変化に起因するものではなく、表板、横板、および裏板の形状やそれらのバランスの違いに由来する可能性が高いことを示している。 モダン・コンテポラリバイオリンとオールドバイオリン(ニコロ・アマティ、ガスパロ・ダ・サロ)の表板の音響構造の違いを明らかにするために、バイオリンの表板に対する局所的なタップにより生じる音を用いて、それらの特徴分析を行った。タップ音から周波数スペクトルに類似した聴覚表現の重心を計算し、表板におけるそれらの分布を調べた。その結果、19世紀以降に製作されたバイオリンの表板では、f字孔間周辺の重心周波数が高く、かつ、左右非対称であった。一方、18世紀以前に製作されたオールドイタリアンバイオリンの表板では、場所によらずタップ音の重心周波数が類似していることが示された。この結果は、18世紀以前のイタリア北部では、タップ音によるバイオリン板の調整が行われていた可能性を示している。この分析はストラディバリウスを対象に行うことができなかったが、ストラディバリウスは、これらのオールドバイオリンの製作方法を引き継ぎつつ独自の改良が施された可能性が高いと考える。
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