2017 Fiscal Year Research-status Report
各種生体信号と各種感覚刺激を組み合わせた眠気マネジメント
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16K00375
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
伊賀崎 伴彦 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (70315282)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | カロリンスカ眠気尺度 / 心拍変動解析 / サポートベクタマシン / 眠気予測 / 嗅覚刺激 / 覚醒効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
【模擬運転実験】 21~22歳の健常男性5名を被験者とし、8~10および13~15時の間にドライビングシミュレータに搭乗してもらい、障害物のない全長2.4kmの楕円形のサーキットを100km/hで50分間継続運転するという実験を4回課した。このとき、被験者の脳波、眼電図、心電図、呼吸曲線、眼球運動、指尖容積脈波を計測するとともに顔表情を録画した。実験終了後、録画した顔表情を再生し、被験者にそれを見てもらいながら30秒ごとにKSSに回答してもらった。平成28年度に実験を課した19~35歳の健常男性11名とあわせた16名について、16パラメータを用いて心拍変動解析を行い、SVMを用いて5分後の眠気予測(眠気なし、弱い眠気あり、強い眠気ありの3段階)を行った。その結果、全被験者の平均で75%の予測精度となった。以上のことから、心拍変動解析より、眠気の有無、眠気の強弱の予測の可能性が示唆された。 【嗅覚刺激実験】 22~24歳の健常男性4名を被験者とし、8~10および13~15時の間に実験室内の椅子に座ってもらい、開始5分から30秒間の嗅覚刺激(グレープフルーツ香)を行い、10分間の刺激間隔をとり、合計5回嗅覚刺激を行うという実験を4回課した。このとき、模擬運転実験と同様の計測(除、眼球運動)を行った。これを1回の実験とし、被験者に日を改め合計4日行った。その結果、嗅覚刺激時にKSSスコアが下がっていることが見られた。また、嗅覚刺激時にα波帯域のパワーが減少していることが見られたことから、嗅覚刺激により覚醒効果が示唆された。さらに、MeanRR(平均心拍間隔)の変化率が増加するにつれてKSSスコアの変化量も増加すること(正の相関)が見られた。以上のことから、嗅覚刺激が眠気に対する覚醒効果を心拍変動解析でモニタリングすることの可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記述したとおり、平成28年度に引き続き模擬運転実験を行った結果、合計16被験者×8実験=128試行のデータを収集することができた。各試行のデータは、脳波、眼電図、心電図、呼吸曲線、眼球運動、指尖容積脈波、顔表情、KSS(主観的眠気アンケート)、FEE(客観的眠気アンケート)から構成される多彩な内容であり、貴重な「財産」を蓄積することができた。また、研究実績の概要では言及しなかったが、脳波、眼電図、眼球運動についても解析を行っており、それぞれ眠気推定を行うことができた。これらの結果については、国際会議で発表したり、学術雑誌に投稿したりしている。 また、本研究課題で目標としている「眠気マネジメント」に向けて、グレープフルーツ香を用いた嗅覚刺激による覚醒効果について、嗅覚刺激の基礎実験を行うことができた。その結果、被験者自身による感性評価はもちろん、脳波の計測解析により、嗅覚刺激時に覚醒効果が見られ、それを心拍変動解析でも評価できそうであることがわかった。新規立ち上げによる実験装置作成や、模擬運転実験と被験者を融通する必要があったため、被験者は4名にとどまったが、1名あたり8試行行ったので、合計32試行のデータを収集できている。なお、嗅覚刺激実験のプロトコルは模擬運転実験に準拠していることから、最終年度に向けて両実験を統合して検討するための基盤を確立できたものと考えている。 以上のことから、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目標は、眠気を評価し、強い眠気を訴える前にそれを解消する「眠気マネジメント」である。平成29年度の目的は、サポートベクタマシンを利用することで、現在の眠気の推定にとどまらず、近未来の眠気の予測についても実施すること、「被験者が強い眠気を訴えた際に各種感覚刺激を与え、眠気を減少させる効果的な刺激の種類や方法の検討」を実施することであった。 現在までの進捗状況に記述したように、おおむね順調に進展していることから、平成30年度は、被験者より計測された生体信号から生体信号から現在の眠気を評価し、強い眠気が推定された際に強い嗅覚刺激を与え、眠気が減少するかを実証する。また、弱い眠気が推定されている間も弱い嗅覚刺激を与え、眠気が増加しないかを実証する。
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