2017 Fiscal Year Research-status Report
眼球運動の計測による定型発達群と自閉症群を判定するアセスメントツールの開発
Project/Area Number |
16K00381
|
Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
鳥居 一平 愛知工業大学, 情報科学部, 教授 (50454327)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 障害者支援 / 画像処理 / 視線方向検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、児童精神科医の主観的診断を裏付けるための、発達障害児の判定を行えるアセスメントツールの開発を行っている。自閉症などの発達障害を眼球運動計測で判定し、誰でも同じ定量的な判断結果が得られ、正確に判別できるアセスメントツールである。我々が既に開発した、瞬き判定方法(特許第5871290号)の残像手法を用いた。 平成28年度の研究では、パスート眼球運動時の被験者の精密な眼球運動の計測を行った。一定間隔で注視点が表示される映像(ギャップなし映像)を見せて、なるべく早く注視点を見るように指示をし、次に一定間隔で注視点が表示され、注視点が消失し、再び表示される映像(ギャップあり映像)を見せた。定型発達群は、再び注視点が表示される際に、眼部のサッケード運動が通常より速くなるが、自閉症群は速くならなかった。さらに、反応時間(反応潜時)を年齢別に比較してみると、ギャップのありなしのいずれにおいても、反応の遅延がみられた。自閉症スペクトラムの児童では、脳内の眼球運動制御機構のうちで随意性に注視活動を保持したり、パスート運動を起こしたりする経路また は機能に何らかの異常があることが示唆された。 平成29年度の研究では、開発したアセスメントツールと脳血流計と組み合わせ、脳血流量との関連性を研究した。眼球運動を取得している際の被験者の前頭前野の血流変化を解析し、脳血流の変化パターンと視線動向との関連性を求め、評価指標と結びつけた。定型発達群と自閉症群の脳血流変化量のグラフである。定型発達群の児童は、一定の増加傾向が見られるが、自閉症群の児童はいずれも注視点の迅速な動きに追従できず、視線が逸脱してしまうため、脳血流の低下が認められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
被験者のパスートとサッケード眼球運動の精密な測定を行なった。 ターゲットを注視する被験者の黒目を測定し続け、フレーム間の位置変化を取得し、測定時間の平均変化量を数値化する。 これを確率密度関数にプロットすることで、定型発達群・指示に従える自閉症群・指示に従えない自閉症群の3つの群に分けられ、それぞれを判別するしきい値を特定できた。 次に、箱ひげ図に3つの群の数値を適用し、各群のデータの分散度と傾向を解析した。 定型発達群は各被験者のデータの分散が少なく、適切な変化量に推移しているのに対し、指示に従える自閉症群は、データの分散が非常に高く、過度の眼球運動が見られる。過度の運動は、サッケードの前後にターゲットを固視できない場合に発生しやすい。一方、指示に従えない自閉症群は、分散度が非常に少なく、眼球の位置変化が殆ど見られなかった。検出精度をROC曲線で評価した結果、98.77%という判別率が示された。 本研究の測定方法では、判定に利用するデータの重なりが2%以下と非常に少ないため、使用者の眼球運動の特徴点を見つけ、どの群と傾向類似性があるかを正確に判別することができるため、高い有用性が示唆されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
自閉症スペクトラムは明確な症状・原因があることの多い身体の疾患とは違い、児童一人一人がそれぞれ異なった症状を有している。WHOが定める知的障害の程度基準は、知能指数(IQ)によって定義されているが、これらの知能指数を正確に測ることは困難であり、自閉症スペクトラムの児童の知的指数を状態数値化することが求められてきている。 これまでの研究成果を元に、左右眼部のズレや反応速度を画素数変化量を用いた画像処理によって判定させ、知能指数(IQ)の測定が難しい自閉症スペクトラムの児童の状態数値化を行う。 分析方法は、MATLABを用いたオリジナルのプログラムを用いて行う。MDS解析 (Rmultidimentional scaling: MDS) を用いて二次元座標上にプロットし、健常者群の中央値からの距離をMDS距離としてそれぞれの群で比較して、群間比較は一元配置分散分析法および多重比較検定を用いる。
|
Causes of Carryover |
物品費に関して、17年度は、16年度に購入した機材を応用して対応可能だったため、新規購入物品を抑えたため生じました。 今回は最終年度のため、新たなアプローチとこれまでの研究の総括のため、 主に、眼球運動を正確に取得できる赤外線カメラの購入や、処理を行うラップトップPCの購入、及び国際学会への参加費・渡航費として使用したいと考えます。
|