2016 Fiscal Year Research-status Report
ベイズ推定水和構造を使った超精密小角X線散乱計算法の高速化
Project/Area Number |
16K00396
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
関 安孝 高知大学, 教育研究部医療学系医学教育部門, 教授 (30377220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 成芳 北九州工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20623995)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 小角X線散乱 / タンパク質 / 天然変性タンパク質 / 分子動力学計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の遂行に必須な,精密Small angle X-ray scattering (SAXS) 測定を高輝度光科学研究センターにあるSAXS測定専用ビームライン(SPring-8 BL45XU)にて実施した。このビームラインには,高感度2次元X線検出器が設置してあり,本実験に適している。タンパク質溶液の調製は,共同研究者の研究室にて実施した。変性球状アポミオグロビンと天然変性タンパク質αシヌクレインの測定を行った。αシヌクレインは野生型と変異型を測定した。αシヌクレインに関して,超精密SAXS計算との比較や,その高速化プログラムの開発に利用可能な高精度なデータが得られた。 超精密SAXS計算のために,球状タンパク質の結晶構造を初期座標とした分子動力学計算を実行した。得られる蛋白質と溶媒水分子の原子座標の時系列データを基に,1つの蛋白質につき100個の超精密SAXS計算を実行しその平均をとった。球状蛋白質の超精密SAXS計算データは,精密SAXS測定データ(過去に測定済み)と定量的に比較し,十分な精度で一致することを確認した。現在,このデータを用いて,水和構造のモデリングを開始する段階である。 一方,申請者が開発した分子モデリング法を使って天然変性領域を含むタンパク質,及び天然変性タンパク質の予測構造集団を生成した。今後,その中から無作為に選択した100個の構造について,周りに付加した溶媒分子の分子動力学計算を行なう予定である。1つの溶質分子構造につき複数の異なる溶媒分子構造を得て,これを基に超精密SAXS計算を実行する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究計画で実施予定であった「SAXS測定」と「超精密SAXS計算(球状タンパク質)」は予定通り遂行した。「SAXS測定」に関しては,一部取得できなかったデータがあるが,次年度以降,順次測定して行く予定である。一方,「超精密SAXS計算(天然変性タンパク質)」は実行開始が遅れたが,これも次年度以降開始出来る状況にある。また,球状タンパク質に関しては,水和構造モデリングを既に開始しており,この点に関しては当初の予定よりもはやく進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平性29年度は,球状タンパク質の超精密SAXS計算データを参照データとして,プログラムの高速化を実現する。具体的には,申請者らが分子動力学計算から特定した蛋白質周りの水和サイトを参考に,3次元ガウス分布の電子密度を仮定し,ガウス分布のピーク位置とピーク電子密度,および分散をパラメタとした水和モデルを構築する。タンパク質の原子座標と水和モデルを使ったSAXSの高速計算プログラムを作成する。 また,遅れている天然変性タンパク質の超精密SAXS計算を実行するとともに,一部SAXS測定も実行していく予定である。
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Causes of Carryover |
放射光利用施設(高エネルギー加速器研究機構、高輝度光科学研究センター)の十分な実験時間の確保ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究で利用可能な放射光利用施設への利用申請を積極的に行うことで、実験時間を確実に確保する。
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