2016 Fiscal Year Research-status Report
渦相関法を用いたオゾンとNOxのフラックス計測手法の開発と森林観測への応用
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16K00520
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Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
和田 龍一 帝京科学大学, 生命環境学部, 准教授 (90566803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松見 豊 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (30209605)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | オゾン / 窒素酸化物 / 森林 / フラックス |
Outline of Annual Research Achievements |
温室効果気体や微量気体の発生・沈着過程は対流圏化学と放射強制力の変動を通して大気環境に影響を及ぼす。反応性窒素ガス(主にNO, NO2等の窒素酸化物)やオゾンについては、技術的な難しさゆえに発生量・沈着量の時間変動の解明とその要因解明が遅れている(日本学術会議IGAC小委員会記録文書“今後の日本の大気化学研究”, 2008)。本研究では、高感度・高時間分解能にて計測可能な装置を開発し、森林での観測に適用することで、反応性窒素ガスとオゾンの発生量・沈着量の時間変動とその要因の解明を試みる。 平成28年度、レーザー誘起蛍光法(LIF法)のNO2の検出感度の向上を試みた。改良したLIF装置の検出限界(1秒積算)は160 pptvとなり、改良前に比べ感度が24%向上した。 平成28年10月7日~10月10日に富士吉田アカマツ林微気象観測タワーにて改良したレーザー分光計測装置を用いて、渦相関法によるNO2フラックスの予備観測を行った。渦相関法による計測には、0.2秒程度の高い時間分解能にて大気中の対象物質の濃度を正確に計測する必要がある。大気サンプル口と超音波風向風速計を微気象観測タワーの高さ26.5 mの地点に設置し、大気試料をサンプル口からPTFE製チューブを用いて地上のNO2レーザー分光計測装置、およびCO2赤外分析装置に供給した。本観測で得られたCO2フラックスは森林総合研究所が同タワーにて渦相関法により求めているCO2フラックスの計測結果とよく一致し、本予備観測の計測とデータ処理がうまくできていることを確認した。NO2フラックスの予備観測の結果、計測を行った日は森林からNO2が放出されていることが示された。平成29年度は、より長期的な観測を実施することで、データを積み重ねる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、NO2レーザー分光計測装置を改良し、大気中のNO2検出感度を24%向上させた。当装置を用いて富士山麓に位置する富士吉田アカマツ林微気象観測タワー(森林総合研究所/山梨県富士山科学研究所)にてNO2フラックスの予備観測を実施した。同タワーにて渦相関法によるCO2フラックス計測を同時に行った。渦相関法によるCO2フラックスの計測手法は確立されており、同タワーにおいて継続的に観測されている。同タワーでのCO2フラックス計測データと本予備観測のCO2フラックス計測結果を比較することで、本予備検討の計測およびデータ処理がうまくいっていることを確認した。NO2フラックス計測検討に関してはおおむね順調である。 オゾンとNOの高感度・高時間分解能計測装置の開発は共同研究者である名古屋大学松見豊教授が、化学発光法の原理を用いて製作した装置に改良を加えることで実施・検討している。オゾン分析装置に関して平成28年度の検討ではオゾンを検出することができなかった。原因として、化学発光を生じるために加えたNOガスの濃度が低かった可能性が考えられた。現在、より高濃度のNOガスを準備しており、引き続き渦相関法にてオゾンフラックス計測が可能となる検出感度と時間分解能を備えたオゾン分析装置の開発検討を行う。 NOの分析装置は大気試料にオゾンを添加して生じる化学発光を検出する。オゾンは反応性が高くボンベ等に保管することが出来ないことから、その場でオゾンを発生させることが必要となる。水銀ランプを用いて、オゾン発生装置を自作し、装置の性能を評価した。約250ppmvのオゾンを安定して発生できることがわかった。渦相関法にてフラックス計測が可能となる検出感度と時間分解能を備えたNO分析装置の開発検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
化学発光法の原理を用いたオゾンとNOの高感度・高時間分解能にて計測可能な分析装置の開発を行う。なかでもオゾンの高感度・高時間分解能分析装置の開発を重点的に推進する。オゾン分析装置の開発検討において、昨年度は添加するNOガスの濃度が低かったためにオゾンが検出できなかった可能性があったことから、今年度は高濃度のNOガス(10%)を用いて検討を実施する。この場合、一般的な吸着剤ではNOガスが吸着剤により分析装置の排気から十分に除去されず、大気中にNOが放出されてしまう可能性があることから、高濃度のNOを分析装置の排気から十分に除去できる手法を同時に検討する。渦相関法にてオゾンフラックス計測が可能な検出感度・時間分解能を持つ分析装置の開発には、いかに安定してNOガスを大気試料に添加できるかが重要と考えられ、NOガスを安定して供給できる方法を検討する。 レーザー分光計測装置を用いたNO2フラックスの富士吉田アカマツ林微気象観測タワーを用いた予備観測を2週間程度行う。昨年度の検討から、24時間以上のデータを取り込むためには、計測システムに不具合があることが分かった。データ取り込みシステムを改良し、より長期的なデータの取得を試みる。上述の新たに開発したオゾン分析装置を用いて、渦相関法によるオゾンフラックスの予備観測検討を同時に実施する。 NOの高感度・高時間分解能計測が可能な分析装置の開発を実施する。NOの分析装置の原理はオゾンの分析装置と同様であるが、オゾン分析装置は大気試料にNOガスを添加するに対し、NO分析装置は、大気試料にオゾンガスを添加する。オゾン分析装置を開発し、その技術を展開することで、迅速なNO分析装置の開発が期待できる。
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[Journal Article] In situ measurement of CO2 and water vapor isotopic compositions at a forest site using mid-infrared laser absorption spectroscopy2016
Author(s)
R. Wada, Y. Matsumi, S. Takanashi, Y. Nakai, T. Nakayama, M. Ouchi, T. Hiyama, Y. Fujiyoshi, T. Nakano, N. Kurita, K. Muramoto, N. Kodama
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Journal Title
Isotopes in Environmental and Health Studies
Volume: 52
Pages: 603-618
Peer Reviewed
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[Presentation] 富士山頂におけるNOyの計測2017
Author(s)
和田龍一, 定永靖宗, 加藤俊吾, 勝見尚也, 大河内博, 岩本洋子, 三浦和彦, 小林拓, 鴨川仁, 松本淳,米村正一郎
Organizer
富士山頂第10回成果報告会
Place of Presentation
東京(東京理科大学)
Year and Date
2017-03-05
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[Presentation] レーザー誘起蛍光法を用いたNO計測手法検討と野外計測への適用2016
Author(s)
吉田清重, 滝沢麻緒, 和田龍一, 車裕輝, 中山智喜, 鶴丸央, 坂本陽介, 梶井克純, 定永靖宗, 中嶋吉弘, 松田和秀, 加藤俊吾, 松見豊
Organizer
平成28年度日本化学会関東支部群馬地区研究交流発表会
Place of Presentation
高崎市(量子科学技術研究開発機構 高崎量子応用研究所)
Year and Date
2016-12-13 – 2016-12-13
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[Presentation] 富士山頂におけるNOy濃度の変動とその要因の解明2016
Author(s)
和田龍一, 定永靖宗, 加藤俊吾, 勝見尚也, 大河内博, 岩本洋子, 三浦和彦, 小林拓,鴨川仁, 松本淳, 米村正一郎
Organizer
第57回大気環境学会年会
Place of Presentation
札幌市(北海道大学)
Year and Date
2016-09-07 – 2016-09-09
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