2019 Fiscal Year Research-status Report
DNA損傷を負った細胞が生死の運命を決定する時期と要因の解明
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16K00549
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
橋本 光正 金沢医科大学, 一般教育機構, 准教授 (70293975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 光一 金沢医科大学, 一般教育機構, 講師 (60639938)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | DNA損傷 / DNA修復 / アポトーシス死 / X線照射 / ミトコンドリア膜電 / 53BP1 / ATMの脱リン酸化 / 細胞周期チェックポイント機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNA損傷を負った細胞は、損傷を修復して生存を試みるのか、修復をあきらめてアポトーシス死へ舵を切るのか、この運命の決定をいつ、どのように下すのであろうか。本研究では、X線照射後の細胞をタイムラプスレーザー共焦点顕微鏡で動画撮影し、最終的に生存あるいはアポトーシス死に移行した細胞の照射以降の 状態を、時間をさかのぼって観察した。本研究は、DNA損傷部位に集積する53BP1のフォーカスの数、形態、容積を指標に、運命の決定を下す時期と運命を決定づける要因(DNA損傷数なのか、損傷の質なのか、損傷を受けた細胞周期なのかなど)を明らかにすることを目的としている。これまでに私たちは、72~96時間の範囲が細胞の修復完了かアポトーシス死かの分枝点であることを見出した。そこでこの範囲に着目して、アポトーシス志向細胞について調べたところ、(1)DNA損傷が増加すること、(2)残存ATMの脱リン酸化が起こること、(3)ミトコンドリア膜電位が不安定化すること、(4)核膜構造が脆弱化すること、(5)細胞膜破断がおこること、(6)BrdUの取り込みで調べたところ、24~72時間の範囲でBrdUの取り込みが多い細胞は、上述したアポトーシス志向細胞の特徴を見いだすことができた。BrdUの取り込みが少ない細胞は、その逆に生存志向細胞の特徴を見いだすことができた。 次に生存志向細胞について調べたところ、(1)細胞周期チェックポイント機構が強く機能し、G2期停止時間が長いこと、(2)G1期停止時間には依存しないこと、(3)S期停止時間は長くなること、(4)ミトコンドリア膜電位が高い値で安定化した後、96時間を目処に急激に低下すること、を見出した。 またATM、53BP1を免疫染色したところ、X線照射後72~96時間の範囲で残存するフォーカスは比較的短時間にある様なものと異なり、エリアが大きかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
DNA損傷を与えてから、細胞死に至るまでの動画データの解析に、想定以上の時間が必要となった。また本研究課題の現象解析に一番使用頻度の高かったフローサイトメトリーの故障により、その実験データを取得するのに時間を必要とした。研究課題の仮装モデルの検証は終了しているが、原因タンパク、遺伝子の特定に時間が必要であり、論文投稿が予定より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
DNA損傷応答による細胞構造の変化と核構造の変化の相関関係を明らかにする。 X線照射後の細胞をタイムラプス共焦点顕微鏡で動画撮影し、細胞構造の変化と核構造の変化に着目して、その変容を明らかにする。細胞構造はアクチンによって保持されているので、細胞周期マーカーFucciを組み込んだ培養細胞Hela、U2OSに、アクチン-EGFPを導入し、X線照射後の細胞をタイムラプス共焦点顕微鏡で動画撮影する。また、細胞内のアクチンの挙動を制御するタンパクについてもその挙動をDNA損傷応答との関連で調べる。具体的には、Arp2、Arp3などのアクチン重合核化因子、Thymosin、Profilinなどのアクチン結合タンパク、重合の際に核となるアクチン三量体形成促進を担うForminである。アクチン繊維の形成と分解は重合・脱重合の可逆的反応であり、これらの反応の繰り返しが細胞の構造変化、細胞運動につながっている。これらのアクチンおよびアクチン関連タンパクの局在と相互作用を明らかにすることは、DNAを含むDNA損傷応答の全容解明に欠かせないものと考えられる。 核構造の変化とクロマチン構築の関係、修復能への寄与を明らかにする。 核内のアクチンおよび各種アクチン関連タンパクに、SWI-SNF、SWR、INO80などのクロマチン再構成に関するタンパクやNuA4 HATなどのヒストン修飾酵素複合体の、複合体構成要素となり、クロマチンの構造変換に関与しているという報告がある(Szerlong H, Nat Struct Mol Biol, 2008)。X線照射後の細胞を経時的にサンプリングし、核のタンパクを可溶画分とクロマチン画分に分離した後、その変容を調べる。また各タンパク間の相互作用を免疫沈降実験で明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究の遅れによって生じた。この助成金は研究の推進と研究成果の発表と報告に使用する。具体的には物品費として420,419円、研究成果の発表と報告に残り300,000円を振り分ける。物品費の具体的な内訳は培養細胞の維持と実権に使用する試薬とピペットなどに200,000円、抗体やフローサイトメトリー関連試薬に残りを供する。研究成果の発表については論文出版、英文添削の費用とする予定である。
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