2016 Fiscal Year Research-status Report
金属塩および酵素反応を用いた一液型タンニン複合化天然系凝集剤の創出
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16K00610
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
榎 牧子 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (90342758)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 天然凝集剤 / アルギン酸 / ペクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
1)金属塩を用いたアルギン酸凝集剤の一液型化では、0.1%のアルギン酸カリウム水溶液に、諸定量の20%塩化マグネシウム溶液を混合してから定容し、ここへ3 mlの4%塩化カルシウム水溶液を添加することで、一液型凝集剤を得られることがわかった。500 ppmカオリンを対象濁水とした場合、塩化マグネシウムの最終濃度が約0.1%以上において凝集効果がみられ、上澄み液のカオリン濃度は60 ppm以下に到達した。このとき、マグネシウムのみ、或いはカルシウムのみの添加では一液型凝集剤は得られなかった。 2)海藻凝集剤調製条件の最適化では、0.6 Mの塩酸で原料海藻を洗浄した後、pHを4~10になるように炭酸ナトリウムを加えて凝集剤とし、試験を行ったところ、pH9.6程度になるまで炭酸ナトリウムを加えて24 h攪拌する条件が最も良好な凝集剤をあたえることがわかった。これにより、500 ppmのカオリンに対して凝集剤を最終濃度で0.5 ppm加えることにより、上澄み液のカオリン濃度を約30 ppmまで減少させることができた。 3)タンニンを含む植物原料として柿皮を選択し、硫酸または西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)を用いてタンニンの重合を試みた。硫酸による重合では若干の凝集性能改善が確認された。しかし、HRPの場合には、重合はある程度進行するものの、凝集性能向上にはいたらず、現在もなお、手法を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金属塩を用いた凝集剤の一液型化については、上述のとおり、概ね、予定した通りの結果を得ることができた。また、2)海藻凝集剤調製条件の最適化についても、先に記載のとおり、ごく少量で懸濁液を凝集沈降することのできる最適調整条件を割り出せた。しかし、3)の酵素(HRP)処理条件と抽出タンニン重合との相関の把握では、対照実験である硫酸による重合試験でややポジティブな結果が得られたのみであった。タンニンに替えてリグニン添加試験も行ったが、有意な結果は得られず、今後の検討課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
<H29>1)タンニン前処理条件の検討:タンニン原料の乾燥粉末に、金属塩除去のための希塩酸洗浄、組織内タンニン溶出促進のためのアルカリ浸漬またはアセトン浸漬を行い、これらを前処理とする。次項の酵素処理において、高い反応性を示す前処理条件を最適条件とする。 2)酵素処理の検討:前処理条件(希塩酸濃度、処理時間等)を変化させて得られる前処理物に、酵素処理を施す。処理物の粘度を測定し、水溶性または水への分散性を保持する範囲で最も高い粘度を与える条件を最適条件とする。 3)凝集試験およびタンパク質吸着試験:タンニン含有原料についても酵素処後の凝集性能を凝集試験により把握する。 <平成30年度>:1) 酵素処理タンニン含有試料と凝集剤との混合物の凝集試験:前処理を施したタンニン原料粉末を、海藻凝集剤および植物凝集剤とそれぞれ混合する。混合比は1:2、1:1、2:1についてまず検討する。混合物に、酵素処理を施してタンニン複合化凝集剤とする。タンニン複合化凝集剤を凝集試験に供し、前項と同様の解析を行う。最も優秀な性能を示した混合比を最適混合比として次項で採用する。 2)タンニン複合化凝集剤の一液型化:前項3-1.で求めた混合比を用いて、前処理を施したタンニン含有原料を海藻・植物凝集剤とそれぞれ混合した後、酵素処理を行ってタンニン複合化凝集剤を得る。次いで、金属塩を加えて一液型とする。ここで、タンニンが金属イオンを消費することが予想されることから、上記1-1.で求めた最適条件以外に、一価カチオン、およびゲル化能の低い多価カチオンの量を増加させた試験も行い、最終的な金属種およびその添加量を決定する。
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Causes of Carryover |
残額が少額のため、必要物品の購入が行えなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の予算と合わせて必要な物品購入を行う予定である。
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Research Products
(3 results)