2017 Fiscal Year Research-status Report
都市緑地の生物多様性は心理的幸福感を向上させるか?景観スケールでの検証
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16K00631
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
曽我 昌史 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (80773415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 雄広 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 研究員 (80761064)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 景観生態学 / 都市生態学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、東京都民を対象としたWebアンケート調査を実施し、都市住民の自然体験(都市緑地利用)頻度・時間を規定する要因と、緑地利用が人々の身体的(BMIや運動習慣)・心理的(抑うつ・ストレスレベル)・社会的な健康状態(地域社会に対する連帯感)を明らかにした。
Webアンケート調査を通じて計1048人の被験者を対象に、(1)緑地利用レベル(頻度・時間)、(2)個人属性、(3)自然と関わる意欲の高さ、そして(4)身体的・心理的・社会的健康状態の四項目を聞き取った。また郵便番号を基に、各被験者の居住環境(緑被度等)をGIS解析により測定した。
解析の結果、都市住民の緑地利用レベルは、居住環境と自然と関わる意欲の二つの影響を受けることが明らかとなった。居住環境については、居住地周辺の緑地の数や環境の多様度(植生図から算出)が正の影響を持つことが示された。この結果は、たとえ、多くの面積の緑地を景観内に確保できなくても、それらの緑地の配置や質を管理したり、都市住民を対象とした啓蒙活動を行うことで、都市住民の緑地利用を向上させることができることを示唆している。また、都市住民の健康状態について解析した結果、彼らの健康状態は居住地周辺の自然環境要因と自然体験頻度に影響を受けることが示された。具体的には、居住地周辺に緑地面積が多い人、また日常的に緑地と関わる頻度が高い人ほど心理的な健康状態が良いことが分かった。以上の結果は、都市において生物多様性が豊かな緑地を残すことは、都市住民の自然体験の向上をもたらし、ひいては彼らの健康促進にも貢献することを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた研究計画の大部分を平成29年度までに終えることができ、いくつかの投稿論文してまとめることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度、29年度の研究を通じて、都市に残された自然は人々の健康促進に貢献できる可能性が示された。平成30年度は、自然体験と健康促進の関係について、より詳細な因果関係に関する知見を得るため、現地において詳細な社会実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
東京都内の緑地で昆虫類と鳥類を対象としたフィールド調査を実施する予定であったが、人員・時間的な制約により昆虫類の調査が一部行うことができず、旅費と人件費を当初の計画通りに使うことができなかったため。
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Research Products
(6 results)