2016 Fiscal Year Research-status Report
山岳湖沼の環境変化に応答した水草・大型藻類の多様性の変動予測
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16K00633
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
芹澤 如比古 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (80408012)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フジマリモ / 水草 / 淡水藻 / フローラ / 生物量 / 光環境 / 湖沼 / 水質 |
Outline of Annual Research Achievements |
山岳湖沼の環境の変化の結果起こり得る水草・大型藻類の多様性の変動を予測することを目的に,河口湖に3定点,西湖に2定点,山中湖,精進湖,本栖湖に各1定点を設定し,5月まで月1回,平成27年6月より実施している光環境の測定を継続した。その結果,相対光量が7%となる水深(山中湖における水生植物の分布下限水深)は,本栖湖で17.0m,西湖で8.5・8.3m,河口湖で4.7・4.1・4.1m,山中湖で4.6m,精進湖で3.8mであることが判明した。また,富士五湖の光環境(消散係数,透明度,濁度の平均)は良好な順に本栖湖0.152,18.6m,0.18NTU>西湖0.30・0.31,8.2・8.0m,0.36・0.31NTU>河口湖0.55・0.63・0.62,5.3・4.2・4.4m,0.84・1.08・1.07NTU≧山中湖0.56, 4.3m, 1.60NTU >精進湖0.68,3.6m,1.66NTUであることが明らかとなった。 また,精進湖に18定点を設定し,9~10月に4日間,スキューバ潜水により水草・車軸藻類とフジマリモの生態調査を実施した。その結果,水草・車軸藻類の調査では水草7種とシャジクモの計8種(うち新産種2種)が確認され,クロモと,エビモとセンニンモの交雑種が優占種と判断された。各定点での分布下限水深は3~7.5m,St.3での現存量は2mで最大の173g d.w./m2,次いで3m,1m,4mであり,種により現存量の大きい水深が異なっていた。一方,フジマリモについては17定点で着生糸状体を確認し,浮遊糸状体もわずかに確認できたが,球状体などの集合体は確認されなかった。分布下限水深は3~8m,分布上限水深は2~6mであった。定点により水生植物の分布範囲や生育量が顕著に異なっていたが,これは各定点における湖底の底質と光環境の差異が影響しているためと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
富士五湖で同時に行う光環境と水質環境の調査は,平成27年6月から継続していたため,平成28年5月で1年分のデータが揃った。そのデータの解析を行なった結果,十分な情報が得られたと判断されたので,光環境と水質環境の調査は平成28年5月で完了とした。 水草・大型藻類の生態(種組成・分布・生物量)調査は,湖全体に多数の定点を設定したスキューバ潜水による詳細な調査を行ったため,平成28年に完了できた湖沼は精進湖1湖であった。 水草・大型藻類の室内実験による光合成および呼吸速度の測定準備は,安定したデータを取るための条件が整った実験室の整備,恒温槽と浸透機を組み合わせた実験装置の設計と作成,精度の高い測定を可能にするための差働式検容計(プロダクトメーター)のパーツの整備,および予備実験を行い,平成29年夏季より実験を行う準備がほぼ完了した。 五湖における車軸藻類の分布に関する既往資料と最新データの解析,現在の精進湖における水生植物の分布と現存量,およびフジマリモの分布に関する成果については水草研究会,日本陸水学会甲信越支部会,日本藻類学会において発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
水草・大型藻類の生態調査は,平成28年度に調査が完了できた湖が精進湖1湖であったので,平成29年の8~10月に加えて,予備期間とした平成30年の8~10月も実施期間とし,本栖湖,西湖,河口湖,山中湖の順に調査を行なうこととする。また,精進湖は富士五湖で面積が最も小さい湖にも関わらず,平成28年度の調査では,湖全体での調査に4日間を要したため,1湖あたり3日間と計画していた調査日数を,1湖あたり4~7日間に変更して,調査を実施することとする。 水草・大型藻類の光合成測定は,当初の計画通り,平成29~30年度の,水草・大型藻類の繁茂期である8~10月に実施する。材料は水深を異にして生育する各湖を代表する希少種を含めた7種とし,その葉部で,温度20℃・光量400,200,100,50,25,12.5μmol/m2/secにおける光合成速度の測定と,暗条件における呼吸速度の測定を行い,それら7種の光合成-光特性を明らかにし,補償点や光飽和点などを詳らかにする。 既往資料の解析と成果の取りまとめは,当初の計画通り,平成29~30年度についても継続して行い,国内だけでなく,国際的な学会でも発表するとともに,それらの成果を学術論文として国際誌や国内の学会誌で公表することを目指す。
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Research Products
(11 results)