2018 Fiscal Year Annual Research Report
Information design practice by L.Sutnar and K.Lonberg-Holm: an analysis of the design and theory
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16K00711
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊原 久裕 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (20193633)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ラディスラフ・ストナー / レンバーグ=ホルム / オットー・ノイラート / 情報デザイン / カタログデザイン / デザイン思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)平成30年度は、収集したグラフィックデザイン資料を分類し、それをもとにストナーのデザイン方法と理論の分析を試みることを主な課題とした。まず、アシンメトリーのレイアウトや、即物的な写真の効果的利用などの1930年代のヨーロッパのニュー・タイポグラフィに共通して見られた特徴が、ストナーのカタログデザインに通底しているデザイン言語であることを収集した資料を通して確認した。次にストナーのデザインの大きな特徴は、レンバーグ=ホルムとの共同作業を介して具体化されたデザイン理論にあることを示した。それは初期の段階では視覚的選択性、視覚的連続性という2つのデザイン原理に集約できた。1960年代に出版されたストナーの著書『ビジュアル・デザイン・イン・アクション』では、それらは視覚的単純性と視覚的連続性の原理としてまとめられており、特に後者にあきらかなように、彼のデザイン理論が一貫してフロー概念を軸に展開していることがわかった。なお、フロー概念の意味をより深く理解するために、レンバーグ=ホルムの「フロー」の考え方の源泉のひとつが化学者フレデリック・ソディのエネルギー論にあるとする指摘を傍証しつつ、1950年代以降のストナーのエコロジー問題への気づきとデザインの役割についての彼の考え方についても考察を加えた。以上の知見については、日本デザイン学会で発表を行う予定である。 2)前年度から実施していた1930年代におけるオットー・ノイラートとレンバーグ=ホルムらとの関係についての研究のまとめとして、ノイラートの経済理論である実物経済理論に焦点をあてて両者の関係を捉え直し、両者のデザインの理解には、背後にある社会経済思想が重要であることを指摘した。この点に関して、論集『デザインに哲学は必要か』に「思想家によるデザイン:オットー・ノイラートの経済思想とデザインをめぐって」を執筆した。
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