2016 Fiscal Year Research-status Report
自発的・持続的な学習を誘う良いエクスペリエンスを醸成する情報提示方法に関する研究
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16K00717
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
高橋 雄三 広島市立大学, 情報科学研究科, 助教 (30326425)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 人間工学 / インタラクションデザイン / メタ認知 / ソースモニタリングエラー / アウトプットモニタリングエラー / 眼と手の協応 |
Outline of Annual Research Achievements |
道具やシステム等の使い方をユーザがデザイナーの意図した通りに習得するためには,設計者の認知モデルではなくユーザの学習過程をベースに同定した『良いエクスペリエンス』をソースモニタリング機能とアウトプットモニタリング機能に分けてタイムリーに呈示することが重要である.本研究では学習時に獲得したエクスペリエンスの影響が2週間程度持続することが先行研究で明らかになっている課題を用いて両機能の諸特性(学習と保持)を明らかにし,さらに,その呈示タイミングを実験的に統制することで,ユーザの自発的・持続的な学習を促進させる効果が得られることを実験的に検討することを目的とする. 平成28年度はソフトウエアの使用方法を学習・実践する実験研究から,(1)使用方法学習時に使用するデバイス(マウスまたはキーボード)の違いによって,学習(習熟)達成後に行う課題の実践時に発生するエラーの種類(アウトプットモニタリングエラーorソースモニタリングエラー)が異なる可能性について検討した.検討の結果,言語的記憶をベースとするキーボードを用いた学習方法ではソースモニタリングエラーが,空間的記憶をベースとするマウスを用いた学習方法ではアウトプットモニタリングエラーが発生しやすくなる可能性が示唆された.次に,(2)学習中に獲得する『良いエクスペリエンス』を眼球運動と行動指標(マウス操作)を複合させて評価するための解析方法を確立するため,実験で得られた視線運動とマウスポインタの協応運動(眼と手の協応運動)を解析するアルゴリズムについて検討した.視線とマウスポインタの時系列データ表現は合計4次元であるが,極座標変換に基づく開発アルゴリズムを用いることで視線運動とマウスポインタの運動が1対1で比較検討できることが明らかになり,眼と手の協応運動指標を用いることで『良いエクスペリエンス』獲得状態が推定できる可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では,2種の課題を平行して行うことを前提に平成28年度中に取り組む課題として,第1段階:実感課題の作成,第2段階実験環境の構築,第3段階:成果の公表と情報収集,第4段階:予備実験の実施,を計画していた.この内,第2段階の「課題提示・課題同期信号出力サーバ」の構築を年度内に実施することができなかった.このことから,第4段階の予備実験を年度内に実施することができなかった. 第2段階の遅延の理由として,第2段階の「作業パフォーマンスの測定」項の「眼球運動と手(マウスの操作軌跡)の動きの間の協応関係」に関する解析アルゴリズムの確立を優先させたことに起因するものの,その成果は第3段階の促進(当初計画では研究発表2件だったが,結果として成果は3件の研究発表に結びつくことができた)につながった. 平成29年度は第2段階の「課題提示・課題同期信号出力サーバ」の構築を早期行い,予備実験の実施を加速化する計画である.
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Strategy for Future Research Activity |
実験環境の構築を早急に行う.特に,準備している2種の課題の内の,2人の被験者で行う協調課題遂行時の定量的解析に必要な「行動コーディングシステム」(平成29年度新規導入設備)を現在構築中の実験環境に追加して実験・解析が行えるように実験環境の改造を加速化させる.併せて,平成28年度の研究成果の公表と情報収集(平成29年度の第一段階)を推進し,本実験において想定される諸現象の事前把握に努める.
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Causes of Carryover |
校務ならびに諸事情により「研究打ち合わせ」のための出張が1件,キャンセルとなった.また,「研究発表」のための出張先が校務ならびに諸事情により参加学会が変更となり,当初計画よりも出張費が安くなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究発表のための出張費として使用する.
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