2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K00720
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
市原 恭代 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 准教授 (10301813)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 色覚 / カラーユニバーサルデザイン / 1型2色覚 / 2型2色覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
2色覚者,多数派とは色の感覚が異なる者にとって赤は明るく目立つ色ではない。しかし情熱の色は赤だと知っている。また悲しみの色が青系の色であることもわかっている。それは後天的な学習によるものである。となれば色名による文字の刺激と色による色刺激では受ける印象に乖離があるはずである。また多数派と同士でも1型と2型では印象が異なることが予想される。この研究では色感覚が異なる者の色世界を感覚的に知るため、文字刺激と色刺激を用いてSD法による印象調査を行った。被験者,1群:1型2色覚者(以下P型強度と呼ぶ)20代~60代の男性13人,2群:2型2色覚者(以下D型強度と呼ぶ)30代~60代の男性9人,刺激:基本色名11色の色刺激と文字刺激 因子分析を行った結果、今回の実験では最も因子負荷量が大きい値は全て正の値になった。第1因子は「にぎやかな、派手な、暖かい、明るい」第2因子は「濃い、重い、強い」第3因子はD型では「硬い」P型では「乾いた」の形容詞群に影響を与えていた。P型D型ともに第1因子は同じ成分であった。それぞれの形容詞群からそれぞれ第1因子に「感覚性」第2因子に「物量性」という因子名を付けた。P型D型ともに青の色刺激と青の文字刺激は似た傾向が出ていない。色刺激では第一因子さみしい、冷たい、地味な、暗いの感覚性因子が大きいが文字刺激ではこれらの因子は現れず、代わりに薄い、弱い、軽いの物理性因子が大きい。また、ピンクの色刺激と文字刺激も大きく異なる。ピンクの色刺激は第2因子物理性が大きい。しかし文字刺激では感覚性因子が大きい。また、緑は茶色系と似た傾向がでており、紫とも近い位置にある。P型に関しては、図3より青と緑とピンクのそれぞれ第1因子、第1,2因子、第1,3因子に大きく差が見られた。また、白、オレンジ、紫のそれぞれ第1因子、第3因子、第1因子にわずかながら傾向に差が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
少数派の被験者をNPO法人カラーユニバーサルデザイン機構の協力によって大量に集めることができ、研究はたいへん進展している。 少数派の色覚とそれに基づく色カテゴリーの関係がまだ完全には求められていない。例えばProtan(主にL錐体がM錐体に近い分光感度を持つ人々)は、赤が暗く見えることが知られている。しかし、どの程度暗く見えるのか,また赤の範囲のどの部分が暗く見えるのかが調べられていない。 この研究ではProtanとDeutan(主にM錐体がL錐体に近い分光感度を持つ人々)の色覚と色カテゴリーについてのデータを集めることを目的にしている。それによって、ヒトの色覚の多様性の範囲が明らかになり、様々な応用デザイン研究に役立つデータを得ることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに被験者を集め、アノマロスコープを使った実験を予定している。アノマロスコープは既に準備済みであり、予備実験に入るところである。この分野の研究は色彩デザインの研究ではほとんど研究されていない,ヒトの色覚の多様性における分光感度と色カテゴリーの範囲を求めるという研究である。その学術的な特色はヒトの色覚の特性を明らかにするものであり、その意義は大きく、また発展的応用研究も多く見込まれる。日本には長い間、先進諸国のどこでも試行していない石原式色覚検査表による色覚異常者のふるいわけを行い、彼ら,彼女らに対して実質的なその能力があることを調べることさえなしに、進学制限や職種制限を行ってきたという、人権にかかわる差別をしてきた苦い経験がある。 反面、色覚検査表の制作技術は世界のトップレベルにあり、カラーユニバーサルデザインは、このような経緯をたどった日本だからこそ生まれたものであり、現在さらに深く詳細に研究されるべきものである。防災地図においては国際的にも未踏野であり、この研究はヒトの色覚の多様性を踏まえて実際のデザインの現場にカラーユニバーサルデザインを行っていくための基礎研究である。
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Research Products
(7 results)