2017 Fiscal Year Research-status Report
ランドスケープとサウンドスケープシークエンスを援用した“かいわい”サインシステム
Project/Area Number |
16K00724
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Research Institution | Fukui University of Technology |
Principal Investigator |
池田 岳史 福井工業大学, 環境情報学部, 教授 (00340026)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | かいわい / サウンドスケープ / ランドスケープ / シークエンス / サイン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度計画では,平成28年度までのPhase0(“かいわい”の基礎調査)の結果を基に,Phase1(空間構成調査,空間シークエンス調査,既設サイン調査),Phase2(誘導経路の設定,空間のシークエンスとデザインを考慮した誘導サインの最適化),Phase3(“かいわい”を拠点とする回遊性を持つサインシステム構築)を複数エリアで実施するとともに,前年度までの成果発表を行うとしており,この計画に基づき研究を進めた。 本研究において主要な要素としてサウンドスケープ(音要素)の導入を挙げているが,研究を遂行する上で,“かいわい”という概念に基づくサウンドスケープ採音方法,分析方法の検討と確立が必要となる。そこで平成28年度の国内14地区に続き,平成29年度は国内11地区(福井県大野市,勝山市,越前市,若狭町,石川県加賀市,金沢市,富山県射水市,東京都台東区,広島県廿日市市,竹原市等)において調査を行ったが,今年度は特に季節や天候,時間帯による違いといった点に着目した調査と分析を行った。 具体的な調査結果として例示すると,福井県越前市岩本,大滝かいわいの調査では,積雪の有無による比較を行っており,積雪の無い状態では,川の流れ,木の葉擦れ,鳥の鳴き声といった自然の音,自動車,住人の声といった生活の音,紙漉き,ボイラーといった産業の音などが挙げられるが,積雪時にはこの他,雪を踏みしめる音や雪解けによる屋根や樹々からの水滴の音なども採音できた。またこのかいわいにある大瀧神社境内のように,地面が雪に覆われるなど,積雪部分が多い空間では,静寂感が際立っていた。 これらの研究成果については,日本デザイン学会,日本建築学会において関連研究の成果とともに発表を行っており,平成29年度の成果は既に平成30年度発表に向けて投稿済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究業績でも述べた通り,平成29年度計画では,平成28年度までのPhase0(“かいわい”の基礎調査)の結果を基に,Phase1(空間構成調査,空間シークエンス調査,既設サイン調査),Phase2(誘導経路の設定,空間のシークエンスとデザインを考慮した誘導サインの最適化),Phase3(“かいわい”を拠点とする回遊性を持つサインシステム構築)を複数エリアで実施するとともに,前年度までの成果発表を行うとしており,この計画に基づき研究を進めることとしていた。 研究全体の期間内に行わなければならない内容の中で,本研究において過去の関連研究と大きく異なる要素として,サウンドスケープ(音要素)の導入が挙げられるため,その研究手法の確立を優先したため,この面においては進捗していると言えるが,当初計画にあげたPhase2(誘導経路の設定,空間のシークエンスとデザインを考慮した誘導サインの最適化),Phase3(“かいわい”を拠点とする回遊性を持つサインシステム構築)において,遅れが生じている。また研究を進める中で,季節や天候,時間帯による違いといった点にも着目することとしたため,調査自体が若干遅れを生じている。このように計画以上に進捗している項目がある一方で,遅れが生じているPhaseもあるため,研究全体としては,“やや遅れている”と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究全般の当初計画においても,平成30年度は前年度に引き続き,Phase1(空間構成調査,空間シークエンス調査,既設サイン調査),Phase2(誘導経路の設定,空間のシークエンスとデザインを考慮した誘導サインの最適化),Phase3(“かいわい”を拠点とする回遊性を持つサインシステム構築)を複数エリアで実施するとともに,Phase4として調査結果の類型化,手法提案といった研究のまとめを行うこととなっている。 この計画に基づき研究を進めるが,特に以下の点については,今後の研究遂行において極めて重要であるため,成果を得られるよう重点的に取り組むこととする。 1.サウンドスケープ(音要素)採音方法の確立,分類,評価等分析方法の確立。2.具体的に“かいわい”として採り上げ,回遊性を持つサインシステムの構築を試みる地区の絞り込み。3.“かいわい”においてのサウンドスケープの類型化,手法の提案。 なお,平成29年度の研究において遅れを生じている分野については,過去の関連研究の成果の援用により補うとともに,平成30年度の調査においては,計画通り進めることができるよう研究計画を調整することとする。
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Causes of Carryover |
理由: 平成28,29年度当初計画していた遠方の調査を近隣地区に差し替えたため,旅費において差額を生じることとなった。また解析用に計画していたコンピュータ一式の購入を延期しているため差額を生じている。 使用計画: 平成30年度についても複数回の調査を計画しているが,平成29年度に計画していた遠方の調査を平成30年度に行うことで,旅費として使用する計画である。また研究成果の社会への還元を目的とした公表に向けた準備にも使用する。
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