2017 Fiscal Year Research-status Report

過酸化脂質を還元消去する食材の探索と調理加工におけるその利用法の開発

Research Project

Project/Area Number	16K00815
Research Institution	Konan Women's University
Principal Investigator	寺尾純二甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 教授 (60093275)
Project Period (FY)	2016-04-01 – 2019-03-31
Keywords	過酸化脂質 / 還元作用 / 食品機能 / 酸化ストレス / 抗酸化活性 / ネギ属
Outline of Annual Research Achievements	本研究は、ネギ属野菜が有する過酸化脂質の還元作用（活性なヒドロペルオキシ体LOOHを不活性なヒドロキシ体LOHに変換する）を利用することにより、調理加工および消化過程において生成蓄積する過酸化脂質量を低減化する方法を開発することを目的とする。昨年度は、野菜のLOOH還元活性を、13-HpODEから13-HODEへの還元率で評価する逆相HPLC法による実験手法を確立した。本年度は本実験手法により以下の結果を得ることができた。 ①ネギ属野菜として、万能ねぎ、長ネギ、タマネギ、ニンニクおよび比較対照としてニンジンを材料として、13-HpODEから13-HODEへの還元率を測定した結果、長ネギの還元作用が最も強いことが明らかになった。上部緑色部と下部白色部では作用の強さに相違は見られなかった。5種の対照野菜すべてにおいて加熱処理（沸騰水浴中30分）で還元作用は低下した。 ②食用油脂（サラダ油）から光増感法によりトリアシルグリセロールヒドロペルオキシド（TG-OOH）を作成した。TG-OOHはパンクレアチン処理により加水分解されて、ジアシルグリセロール、遊離脂肪酸および遊離脂肪酸（FFA-OOH）を産生することを確認した。 ③　②のパンクレチンによる加水分解反応において、長ネギ試料を添加するとTG-OOHの加水分解は促進されたが、FFA-OOHの還元作用は観察されなかった。長ネギ試料の還元作用がみられなかった原因として、ネギの還元活性本体がパンクレチンにより消化された可能性が考えられた。 ④食肉中の脂質過酸化の触媒としてミオグロビンが働く可能性がある。一方、ミオグロビンはLOOHを還元消去するペルオキシダーゼ活性を有する。そこで、ミオグロビンのペルオキシダーゼ作用に対する長ネギの効果をみた結果、長ネギはLOOHに対するペルオキシダーゼ作用を強める可能性が示唆された。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason おおむね予定した実験を実施することができた。　従来予想していた万能ネギよりも長ネギにより強い13-HpODE還元作用が見られたことは注目される。一方、消化管内でのネギ属のLOOH還元作用をみるためのモデルとして、パンクレチンを共存させた系でTG-OOHの加水分解と生成するFFA-OOHの還元作用を見たが、明らかな結果はみとめられなかった。パンクレアチンにより活性本体が消化されて活性を失う可能性があり、この点はさらに検討したい。　実際の食品においては、ヘム鉄による微量LOOHの分解で生じたラジカル種が脂質過酸化反応を誘導することが知られている。そこで、13－HpODEとミオグロビンを混合した系に長ネギ試料を添加した実験を試みた。現在は、最終的な目的である調理加工および消化過程において生成蓄積する過酸化脂質量を低減化する方法開発の中間段階にあると考えている。今後は実際の食品を用いて調理加工における過酸化脂質低減化方法を確立したい。
Strategy for Future Research Activity	現在まで得られた結果を基盤に、より実際的な食品モデルあるいは実際の食品を用いて調理加工および消化過程で生成蓄積する過酸化脂質量を低減化する方法を提案する。そのため、実際に長ネギを試料として、ひき肉ハンバーグ調理における評価を実施する。さらに、2年間で得られた結果の再現性を確認したうえで、学会発表および論文投稿を行う。
Causes of Carryover	本年度予定した実験に使用する試薬が予定より少量で済んだため、若干の次年度使用額が生じた。この分については次年度に行う実験用試薬購入に充てることにする。