2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K00848
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
早川 清雄 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, プロジェクト助教 (00368292)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脂質合成 / 炎症応答 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
生活習慣病の基盤病態として,炎症の適切な収束が妨げられた状態と考えられる「慢性炎症」に着目した研究を進めている.炎症応答は本来,生体の防御反応であり,生体にとって異変がおこると自然免疫応答を活性化させ,サイトカイン,ケモカインといった微量で強力な生理活性物質を放出する.慢性炎症をコントロールするためには,その分子メカニズムの解明が非常に重要な課題である.近年,Toll-like receptor(TLR)やInflammasomeを介した免疫応答・炎症応答の活性化と脂質代謝・合成が密接に関連していることが報告されている.これまでの結果から、Raw264.7細胞やC57BL/6マウスからbone-marrow derived macrophage(BMDM)を調整し,LPS等で細胞を処理するとカスパーゼのmRNA発現が時間依存的に急速に誘導されると同時に,脂質合成に関わる遺伝子発現も誘導されることがわかってきた.実際に脂質合成に関連する遺伝子発現の変化に対して,カスパーゼが関与しているのかどうかを検討するため,カスパーゼ阻害剤または合成siRNAを用いてノックダウンすると脂質合成に関連した遺伝子発現が有意に抑制された.また,脂質合成の転写制御に関わる因子SREBPとカスパーゼの局在を共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析すると,炎症刺激に依存して誘導されるカスパーゼとSREBPが共局在することが明らかとなった.さらに,活性されたSREBPの核への移行は,カスパーゼsiRNAを用いたノックダウンの実験結果から抑制される傾向が見られた。現在,SREBPとカスパーゼの会合性について免疫沈降法を用いて解析すると同時に,どのような細胞内小器官に両者が局在し、活性化されるのかを共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,炎症応答と脂質代謝・合成のクロストークに着目して研究を進めている.これまでに,qRT-PCRやウェスタンブロット法,さらにマクロファージに対して阻害剤やsiRNAを用いた実験を進め予想された結果が得られている.平成29年度においては,免疫沈降法および共焦点レーザー顕微鏡を用いた解析を進め,会合性および細胞内局在について検討を行った.本研究課題を通して,炎症シグナルと脂質代謝・合成シグナルの新しい関係性が明らかにされつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,当初計画の通り実験を進め,予想された結果が蓄積されつつある.今後も計画に沿った形で実験を進めていく予定である.個体レベルでの解析を進めると同時に,遺伝子発現変化についてグローバル解析を行うことで,カスパーゼが関与する脂質合成・代謝経路に対するシグナル経路の解析を進めていきたいと考える。
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Causes of Carryover |
(理由) 本年度、抗体および脂質解析用試薬の購入を検討していたが、試薬の検討に時間を要したことから、購入予定であった試薬や細胞培養用プラスチック器具を、次年度に購入することとした。 (使用計画) 131,420円の使用計画としては、細胞培養用関連試薬・細胞培養用プラスチック器具および脂質抽出用試薬などの消耗品を購入するための予算とする。
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