2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K00978
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
吉川 武憲 近畿大学, 教職教育部, 准教授 (00757255)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地層観察 / 理科教育 / 湖成層 / 大型植物化石 / 花粉化石 / ICTの活用 |
Outline of Annual Research Achievements |
小学校から高等学校の理科学習において、地層の野外観察がほとんど行われていない現状がある。本研究においては、理科教員が安心して児童・生徒を連れていくことができる地層の野外観察地を構築することを目的としている。ここでいう安心とは、安全でしかも学習効果が高いことを意味する。この学習効果については,学習指導要領が地層観察に求める,大地の変化が実感できることを最重要課題と考える。以下に、安全と高い学習効果の2つの観点から、2017年度を中心としたこれまでの研究実績をまとめる。 安全という観点においては、観察地の露頭の泥岩層の風化による破壊が最優先すべき課題であるとの判断のもと,2017年度は露頭の保護対策を中心に検討した。具体的には有機溶媒を用いて希釈した「土と石の強化保存剤(TOT)」を露頭に塗布し,その後の泥岩層の風化の状況をチェックしてきた。その結果,本対策が露頭保護に有効であるとの結果を得ることができた。計画では地層観察路の設置を考えていたが,長期的な視点から施設の劣化などの問題が避けられないことから断念せざるを得なくなった。 高い学習効果をめざすという観点においては、教材開発の基盤となる地層の形成過程に対する科学的な裏づけとして,雨滝湖成層の形成過程についての検討を実施した。現在はその結果を論文にまとめ投稿している状況である。さらに,大型植物化石及び花粉・胞子化石のリストアップもほぼ終了した。現在はそれらの状況から当時の植生や古気温等に関する考察を行っているところである。また,上記の研究成果をもとにした教材化にも取り組んでいる。その一例として,タブレットpcを用いた野外での地層観察記録の作成,タブレットpcを用いた簡易的な大型植物化石の同定,USBカメラを用いた花粉化石の観察等の実践化を模索,検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
安全という観点から露頭の保護対策が急務であるが,本年度中には具体的な対策は実施できなかった。その理由としては,試用した「土と石の強化保存剤(TOT)」の効果を見極めるのに十分な時間をとりたかったことが第一である。また,この効果検討の期間中に本地域を活用した教材の作成をいち早く進めようと考え,教材化に使用すべき次年度の予算を本年度に前倒しして利用したため,露頭全体に塗布する「土と石の強化保存剤(TOT)」が購入できなかったこともその一因といえる。 また,本年度までにほぼ学術的な調査を終了し,その成果をまとめておく予定であったが,論文化作業がやや遅れている。しかし,雨滝湖成層の形成過程に関する論文は投稿済みであり,産出する大型植物化石と花粉化石を関連づけた当時の植生等の検討もほぼ終了し,論文化をしている状況にはある。このような状況からして,これらの遅れは深刻な状況だとはいえないと判断している。 一方,地層観察地を用いた教材化については順調だと考えられる。ICTを積極的に利用する野外での地層観察の実践例はこれまで筆者の知るところはない。教材の開発は順調に進んでおり,今後の実践によりその効果を確かめる段階にきている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,露頭保護の観点から「土と石の強化保存剤(TOT)」の塗布を実施する。これにより,露頭表面が常に観察に適する状態に保てることが期待できる。また、これまでの調査で明らかになった雨滝化石層周辺の形成過程や産出する大型植物化石及び花粉化石に関する論文を完成させる。そしてこれらの研究成果に基づく教材化を実施し,2018年度中にはその成果をまとめる。具体的には児童・生徒等に協力を得て今回の研究で開発した教材を利用した野外観察を実施し,その成果を明らかにしたい。その中でこれまでに実施されていないICTを活用した地層観察のあり方を提示したい。また,それらの成果については,積極的に学会等で報告するとともに,ガイドブックにまとめる予定である。このガイドブックは,香川県内の小・中・高等学校に配布するだけでなく,HP等による周知で広く配布していきたい。さらに今回の成果については,地元の教員研修などにも積極的に反映させたいと考えている。
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Causes of Carryover |
事前の計画では本年度に地層観察路等の整備を計画していたが,露頭保護及びICTを用いた地層観察の教材化に予算の使途を変更したことが最大の要因である。
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Research Products
(2 results)