2020 Fiscal Year Research-status Report
理科教師の授業力量の高度化に関する研究ー省察的実践力の形成を支援する事例開発ー
Project/Area Number |
16K01019
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山崎 敬人 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (40284145)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 教師教育 / 省察的実践 / 理科教師 / 授業力量 / 省察 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,教師の授業力量の中核をなす省察的実践力の形成に焦点をあて,多様な成長段階にある理科教師を対象として省察的実践とその実践力の実態・特徴を解明するとともに,理科の授業実践の事実や文脈,実践知などが埋めこまれた省察的実践の「事例」として再構成し,教師の省察的実践力の向上を目指す学びにおける「事例」活用の有効性について検討することを目的としている。 第5年次(研究期間が1年間延長)にあたる令和2年度は,新型コロナウィルス感染症予防への対応のため,学校現場での調査は実施できなかった。そのため,教職経験年数が異なる4名の小学校教師を対象として前年度までに実施した授業観察やインタビュー調査により収集された調査資料をもとに,省察的実践とその実践力の実態や特徴,授業観との関連に関する分析・考察を行った。 その結果,例えばある教職5年目の教師は,それまでの教職経験を踏まえて「学力的にしんどい」子どもの思考の視点から実験方法の適切な順序性の吟味を試みていたことや,別の教職7年目の教師は,時間のマネジメントを重視し,子どもの認知の実態に応じた柔軟な対応よりも,むしろ予め計画した授業の目標と構想にできるだけ即した指導を展開していくことを重視していたこと,さらに別の教職14年目の教師は,時間のマネジメントや誤概念が学習される懸念への対応に留意しながらも,子どもの思考の流れや学習状況に応じて当初の授業構想を部分的に変更するなど,授業を柔軟に再構成していたことなどが指摘された。 このような事例的検討を総合した結果,教師の省察的実践の特徴は,教職経験年数との関連だけで捉えるよりは,むしろ,それぞれの教師が多様な状況や文脈に当面しながら思考・実践・省察を繰り返すなかで学んできた指導方法や授業実践のあり方に関する原則や授業観が反映されたものとして検討していく必要があると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究者が所属機関の附属校で併任していた業務の多忙さと新型コロナ感染症拡大予防への対応のため,本研究を年度当初の計画どおりに実施するための時間や機会を十分に確保できなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度まで研究期間を再延長することが承認されたので,最終年度において理科教師の授業力量の高度化を図るための省察的実践の事例化と,省察的実践力の向上に向けた教師の学びにおける事例活用の可能性について考察し,最終的な研究成果を総括する。
|
Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由)研究者が所属機関の附属校で併任していた業務の多忙さと新型コロナ感染症拡大予防への対応のため,本研究の推進に係わる調査・分析などの時間と機会が十分に確保できなかったことで,調査・分析にかかわる諸経費を計画通りに執行できなかった。 (使用計画)研究期間の1年間の再延長が承認されたので,この最終年度において,教師用の学習材として活用していくための省察的実践の事例化の作業や調査・分析等に係わる経費,及び研究成果の総括に関わる経費として適切に執行する。
|
Research Products
(2 results)