2017 Fiscal Year Research-status Report
長期的視点に立ったティーチング・ポートフォリオの作成と維持管理の支援
Project/Area Number |
16K01131
|
Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
高井 久美子 帝京大学, 理工学部, 講師 (00527682)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 博芳 帝京大学, 理工学部, 教授 (40240519)
溝口 佳宏 帝京大学, 経済学部, 准教授 (50609386)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ティーチング・ポートフォリオ / ファカルティ・ディベロップメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,教員のティーチング・ポートフォリオ作成とメンテナンスを長期的な視点で支援することを目的としている.今年度は,ティーチング・ポートフォリオの作成と更新などのメンテナンスを支援する方法について具体的な検討を行なった. ティーチング・ポートフォリオは教育業績を記録する資料の集合で,精選された記述と根拠資料からなる.今年度は,教育活動とティーチング・ポートフォリオの関連を整理して,授業の設計,実施,成果の確認,振り返りをPDCAサイクルとして捉え,ティーチング・ポートフォリオの本文の構成要素と関連付けた.その上で,組織的にティーチング・ポートフォリオを導入する状況においては,全体的に支援が必要なことから,作成・更新の際の困難について検討した. これまでの教育活動を振り返るための材料を集めることや,根拠資料(エビデンス)を集める作業の困難さについては,オンラインストレージを用いて,授業に関する資料を電子的に蓄積することが可能な環境を構築し,研究グループによる試用実験を行なった. ティーチング・ポートフォリオ更新の際の困難さの検討結果によって,更新の動機付けや,資料収集のリマインダ,作業時間の確保などが課題として挙げられた.また,資料蓄積の試用実験結果を踏まえて,ティーチング・ポートフォリオ更新時の支援として,授業の設計,実施,成果の確認,振り返りといった教育活動のそれぞれのフェーズにおいて資料収集やアイディアの記録を促すリマインダ機能や,検索機能を持つティーチング・ポートフォリオ作成・更新の支援のためのシステムを着想し,設計した. このように支援の枠組みを検討し,電子的な資料の蓄積の試用結果を踏まえてシステムの構築を具体化したという点において今年度の成果は意義があるといえる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由)今年度に計画していた3つの項目のうち2項目について成果が得られた. (1) ティーチング・ポートフォリオの作成とメンテナンスの長期的モデルの作成については,文献調査から得られたティーチング・ポートフォリオの構成要素と,日常的な教育活動との関連を整理した.これにより,授業の設計から振り返りまでを一区切りとしてメンテナンスのサイクルを提示した. (2) ティーチング・ポートフォリオの作成とメンテナンスの長期モデルの評価項目の検討については,今年度は授業の設計から振り返りまでを1サイクルとして検討した.そのため,教員の長期的なキャリアを視野に入れたモデルの作成と評価までは至っていない. (3)ティーチング・ポートフォリオの作成・蓄積・維持管理の実験については,日常の教育活動を行なう過程で生じる資料の蓄積を,研究チームのメンバーがオンラインストレージを用いて試行した.ティーチング・ポートフォリオの更新時には,このようにして日頃から蓄積した資料からエビデンスを抽出することが可能である.一方,この試用実験により,ティーチング・ポートフォリオの更新に関しては資料の蓄積のほかにも更新のトリガーとなるような働きかけが必要であることも示唆された.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,ティーチング・ポートフォリオの作成とメンテナンスの際の教員への支援のあり方について検討を進めることにより課題に取り組む計画である.ティーチング・ポートフォリオの作成やメンテナンスを組織的に導入する状況を対象として支援の実装方法を検討する. 授業資料等の電子的な蓄積が可能な環境のもとでティーチング・ポートフォリオの作成・更新作業を行なうことを想定する.資料の蓄積については,オンラインストレージ環境を用いた日常の教育活動を行なう過程で生じる資料の蓄積と共有の試行を,範囲を広げて実施する.ティーチング・ポートフォリオの作成・更新の際にスムーズに作業できることをねらいとして,情報電子工学科の複数の教員に授業の資料等を蓄積するオンラインストレージ環境を提供して試用してもらう.また,更新を支援する機能を実装したシステムを構築し,ティーチング・ポートフォリオ更新の際に試用実験を行なう.情報システムによる支援のほか,教員コミュニティにおける支援活動について検討も進める.
|
Causes of Carryover |
(理由)今年度は,ティーチング・ポートフォリオ作成者にインタビューを行なってティーチング・ポートフォリオの実例について質的調査を行なう予定であったが,ティーチング・ポートフォリオの構成例については書籍およびWeb等で公開されているティーチング・ポートフォリオを中心に調査を行なったため,インタビュー調査に関する費用が繰り越しとなった. (次年度の研究費の使用計画)研究を進める中で,ティーチング・ポートフォリオ更新の際の困難を解消する方策として,教員に対して行なう支援の形を具体化することができた.支援の方法の一つとして,教育活動のPDCAサイクルと関連付けて,ティーチング・ポートフォリオの構成要素となりうる情報やエビデンスを蓄積する情報システムが挙げられる.この情報システムを実装するにあたってはシステム開発およびデータ整理のための人件費が必要である.そのため,生じた次年度使用額(未使用額)を主にシステム開発およびデータの整理のための人件費にあて,30年度の助成金とあわせてティーチング・ポートフォリオ更新の支援のための方策を検討し,成果発表を行なう予定である.
|