2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K01157
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川本 思心 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (90593046)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 努 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (00595291)
種村 剛 北海道大学, 高等教育推進機構, 特任助教 (20759740)
杉山 滋郎 北海道大学, 理学研究院, 名誉教授 (30179171)
田中 幹人 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (70453975)
石井 哲也 北海道大学, 安全衛生本部, 教授 (40722145)
|
Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
|
Keywords | 科学技術社会論 / デュアルユース / 科学技術史 / 専門家の社会的責任 / 軍事研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に引き続き、日本や海外のデュアルユース研究について、資料調査及び、関連分野の専門家・関係者等へのインタビュー調査を行い、日本の学術における「デュアルユース」概念の導入やその現状について情報を収集した。これらの調査結果は学会等で発表し、また論文等で発表した(進展状況の項で後述)。 デュアルユース問題には様々な切り口がある。いわゆる軍事研究の問題として語られる軍民両用性の問題、高度かつ不確実性の高い科学技術の誤用に関する用途両義性の問題。デュアルユース性のある技術・情報・人をどのように管理するのか、資金源なのか、研究途中でのチェックなのか、輸出入の管理なのか。それはセキュリティの問題なのか、セーフティの問題なのか。研究者個人が研究内容を決めるのか、所属研究組織、あるいはアカデミア全体、あるいは国家の規範や政策が優先されるべきなのか。デュアルユース問題における「研究者」とは大学の研究者だけを指していて良いのか。 これらは当然、研究組織や、法的制度といった社会システムの構築によりガバナンスされるべき問題であるが、逆説的には、それらを実質化するための、研究者の倫理の問題に帰結せざるを得ない。学生に対して実施した試行的な質問紙調査において、デュアルユース研究の結果生じた問題の責任について、専門家が責任を負うか負わないか、どちらについても漠然とした根拠のまま、両極端に振れた答えを示す例が多く見られた。これらの知見を元に、さらに最終年度、研究を進めて行く。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果は今年度、学会2件およびシンポジウム2件で発表するとともに、論文2本、紀要2本、一般誌2本に掲載した。また、一般市民とこの問題を共有し、市民側からの問題意識も探るために、サイエンスカフェ(1件)、討論劇(1件)、市民向けセミナー(1件)を行った。さらに、北海道大学の学部授業(1件)、大阪大学および北海道大学の大学院授業(各1件)、社会人向け授業(3件)、でデュアルユース問題を扱い、どのような題材を用いることが適切か、教育プログラムとしても試行を始めている。 以上のように、調査および社会への発信・教育活動は極めて順調に進展している。本研究の柱の一つである質問紙調査については、デュアルユース問題の調査とともに質問項目が増大したが、試行的な調査と関係者等とのディスカッションによって、概ねの方向性と項目を作成することができた。最終年度前半に調査を実施する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
質問紙調査を年度前半に行う。調査対象はまず、一般市民を対象とした大規模調査を、ネットモニターを用いて行う。加えてその結果を踏まえて、北海道大学の研究者を対象に調査を行い、市民と研究者のずれを可視化する。それらの結果については、研究会での議論を経て、12月の科学技術社会論学会にてオーガナイズドセッションを組んで発表し、議論する。また、教育プログラムについても引き続き複数件実施する。これらについて取りまとめ、社会に発信するとともに、研究期間終了後は、これらの知見を活かし、大学・大学院にてデュアルユース問題を扱う授業を引き続き実施していきたい。
|
Causes of Carryover |
質問紙調査の項目についてはほぼ確定したが、実施時期が年度末にあたり準備に時間当てることができず、また回答も十分に得られない可能性もあるため、実施を延期した。しかし既に述べた通り、項目はほぼ確定しており実施に問題はない。繰越予算のほとんどは質問紙調査費として用いる。残りは東京で開催予定の研究会と学会発表等に用いることを計画している。
|