2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K01157
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川本 思心 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (90593046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 努 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (00595291)
種村 剛 北海道大学, 高等教育推進機構, 特任講師 (20759740)
杉山 滋郎 北海道大学, 理学研究院, 名誉教授 (30179171)
田中 幹人 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (70453975)
石井 哲也 北海道大学, 安全衛生本部, 教授 (40722145)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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Keywords | 科学技術社会論 / デュアルユース / 軍事研究 / 専門家の社会的責任 / 科学技術史 / 質問紙調査 / ネットワーク分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、一般市民を対象とした質問紙調査を実施した。質問項目は62問で構成し、インターネットモニター2000名が回答した。大学研究全般については、応用や実用化への期待が大きく、また自国への貢献の期待も小さくなかった。また、安全保障問題への関心も高かった。一方、デュアルユース概念に対する認知は低かった。分野としては医療や健康、生命科学のデュアルユース性を低く見積もるが、セキュリティ技術に関しては高く見積もる傾向が見られた。また、軍事研究の是非に関する質問では、相反する質問にもかかわらず、回答結果が全体としては同じ回答になるといった「ジレンマ」の状況も見られた。一般論として軍事機関からの研究助成については6割が賛成としたが、論点を整理した上で現在の日本の制度について質問したところ、賛成は約1割となった。なお、若年層ほど賛成する傾向がみられた。これらの結果は、デュアルユース問題に関する市民の認識が、極めて限定的であることを示しているが、慎重に分析・検討する必要がある。 本年度は、科研データベースを用いて、安全保障技術研究推進制度に採択される研究者は、その研究分野の研究者ネットワークと異なる位置に属するのかについても調査を行った。デュアルユース技術によってつながる人的ネットワーク「デュアルユース関係」は、現代の研究におけるデュアルユース性を可視化する点では非常に重要である。まだ予備的な分析段階ではあるが、研究者ネットワークの形態からデュアルユース研究の進展状況が捉えられる可能性が示された。 以上に加え、歴史的な背景をおさえるために、国会議事録データベースを用いて「デュアルユース」がどのような文脈で用いられてきたのかの分析も行った。また、日本学術会議や天文学会の軍事研究に関する集会やアンケート等について情報収集した。これらの調査結果は学会および論文等で発表した(進展状況の項で後述)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究成果は今年度、学会3件および研究会等2件で発表するとともに、論文1本に掲載した。また英文書籍(1章分)1本を執筆中である。さらに、一般市民とこの問題を共有し、市民側からの問題意識も探るために、討論劇1件、公開トークイベント1件を行った。教育プログラムについても、北海道大学の学部授業(1件)、大阪大学および北海道大学の大学院授業(各1件)、社会人向け授業(3件)、でデュアルユース問題を扱い、順調に進展している。 一方、本研究の柱の一つである質問紙調査については、既に単純集計結果について、学会発表も行ったものの、多変量解析とその結果の公開については、社会的な文脈も考慮してより慎重に実施すべきと考え、1年研究期間を延長することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
既に実施した質問紙調査の分析を行い、その結果の概要をウェブサイトに公開する。その上で大学の研究者を対象とした質問紙調査を行い、市民との認識のずれを明らかにする。また、学術会議や天文学会が実施した軍事研究に関する意識調査の結果等をふまえ、さらにデュアルユース研究当時者へのインタビュー調査を補足的に行い、分析の観点を精緻化する。これらについては、科学技術社会論学会にて発表するとともに、教育プログラムにも用いていく。
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Causes of Carryover |
質問紙調査を実施したが、より慎重に内容を分析し、社会的状況も考慮しつつウェブ上に公開することとした。繰越予算のほとんどは結果のウェブサイト公開用に用いる。
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Research Products
(6 results)