2016 Fiscal Year Research-status Report
動物福祉を含めた、動物園水族館における保全教育の実践と評価
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16K01202
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Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
並木 美砂子 帝京科学大学, 生命環境学部, 教授 (10711228)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 動物園 / 保全教育 / 動物福祉 / 世界動物園水族館協会 / 教材絵本 / 動物観察 / ふれあい |
Outline of Annual Research Achievements |
1 動物園における動物福祉と保全教育の実践:①平成28年8月 盛岡市動物公園で小学生を含む35家族に対し、シロサイとアフリカゾウを対象にどのような配慮の元に飼育がなされているか、飼育状況の確認、展示場での行動観察を行い、野生保全のとりくみをパネルシアター風に獣舎で行った。②平成28年9月 大阪市天王寺動物園においてコアラとホッキョクグマを対象に、エンリッチメントの状況視察と、来園者(80名)に対する行動観察実施と保全状況の解説を行うとともに、来園者の内協力者10名に対して、そのプログラムの参加感想をインタビューによって把握した。 2 平成28年9月 ふれあい活動について、WAZA(世界動物園水族館協会)会長をオーストラリアのパース動物園を訪ねて、福祉の実現とふれあい活動の両立やその教育的意義についてインタビューを行った。また、子ども動物園における展示視察をタロンガ動物園(オーストラリアのシドニー市)で行った。 3 動物園や水族館における動物福祉の実現および、保全心理学と保全活動の関連について講演会を開催した。①野生生物保全論研究会主催「イルカ類の飼育と展示のありかた」 ②動物園講演会主催「保全心理学とは」を2回開催 ③大阪市天王寺区「キリンカフェ」にて講演会:内容は保全心理学と保全教育に関するシンポジウム参加報告 4 平成28年12月 幼児を含む家族連れとともに、動物園を訪問し、その家族に対して教育活動を行った。提供者は並木美砂子(帝京科学大学)。 5 平成28年12月 小学3年生に対して、教材絵本「マルミミゾウ」を読み聞かせし、担任が読むのと保全教育者(並木美砂子:帝京科学大学)が読むのとで子どもがどのような感じ方の違をもつかを検討した。平成29年2月 同一の教材絵本を大学生に読み聞かせして、その効果を小学生と比較した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.動物園における保全教育の実践は、ほぼ予定通り実践された。その概要報告は、動物園に対してはその都度行っており、とくに、参加者の感想や実施団体への意見等も得られたので、評価につながる。 2.ふれあい活動の概要が、動物福祉の観点から見たときの問題点については、まだ使用動物にとってのストレスの有無や、ストレスの軽減についての検査と実践が行われていない。しかしながら、研究段階においては、研究代表者である並木が所属する帝京科学大学の飼育動物を用いて、実験段階ではあるものの、唾液採取をして、唾液内コルチゾル濃度測定によって測定の可能性を検討しつつある。 3.研究成果の発表等については、上記報告段階であるため、今後の実践の積み重ねと、動物園動物の飼育条件についての提案をまとめる必要がある。その点は、継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.動物園における保全教育プログラムを、目的・方法・活動内容・事後評価の各項目において精査し、成果報告を行う。報告の方法は、冊子および報告会を予定している。 2.飼育動物のストレスについては、「ふれあい活動」で用いられているテンジクネズミについて、データを増やし(2つの動物園の協力を得ることと、大学飼育動物での個体数を増やすことによる)、実際の使用方法との関連をみることとする。同時に、ふれあい動物だけではなく、希少種であるホッキョクグマについて、抗酸化特性をみる検査を行い、コルチゾル濃度に加えて、消化器の健康状態を把握したい。そのことにより、動物園動物のケアの状態を科学的に把握する。 3.保全心理学について最新の研究成果を採り入れつつ、日本ならではの「ふれあい活動」や家畜類を使用した教育活動のありかたを検討する。 4.幼児向けの教材評価や教材の利用方法についての検討は、引き続き行っていく予定である。今後は、具体的に教材作成の活動に、親子や環境教育実践家などの協力を得ながら取り組んでいきたい。
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Causes of Carryover |
28年度中には、学習のための講師依頼をしておらず、その謝金支払いがなかったこと。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度中に、飼育動物のストレスチェック法について獣医師より技術指導をお願いしたい。
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