2017 Fiscal Year Research-status Report
車両走行により自然発生する路面凹凸パターン:安全性向上に向けた科学的形成機構解明
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16K01278
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
蟹江 俊仁 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10332470)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 太裕 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (00344482)
島 弘幸 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (40312392)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 安全工学 / 安全科学 / 路面凹凸 / 車両走行 / 乾燥砂路面 / 積雪路面 / 凍結路面 / 振動実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、理論・実験・観測という3つのアプローチによる「理論と立証の繰り返し」で構成されている。平成29年度は、前年度に行った定点カメラによる観測記録を元に、気象条件との比較検討を実施し、雪氷路面における不規則凹凸の発生条件について精査を行った。加えて、雪氷路面での発現を予測する「そろばん道路発生予報」にも着手し、概ね50%程度の確率で予測することに成功した。 一方、夏季の実験においては、基本となる乾燥砂を用いた室内実験を集中的に実施し、車両の固有周期や移動速度の影響のほか、農地などで確認されている「振動体接触子」の形状についても検討を行った。まず、車両の固有周期や移動速度については、生成にいたるまでの遷移区間も含めて、統計的解析手法を適用することにより、時系列に沿ったランニング・スペクトル図を作製し、生成過程における現象の分析を行った。その結果、車両の固有周期とは異なるものの、ある特定の波長で凹凸が形成されることが判明した。また、移動速度の影響についても、多数の実験の繰り返しにより、現在の実験条件下における「凹凸発生臨界速度」の特定も概ねできるようになったと考える。このような実験は、路面材料を換えた条件でも行われ、湿潤砂、完全飽和砂、乾燥人工雪ならびに湿潤人工雪などで、材料の特性に応じた現象の違いが確認された。 これらの実験結果は、理論的なモデルの構築につなげることを目的に数理的な視点で整理を行い、物理学系ジャーナル(Physical Review)に論文として発表を行い、一定の成果が得られている。 さらに、「接触体振動子」の形状が与える影響を精査するために、従前の車両のタイヤを模した円柱体のほか、農地などで用いられる鋤や鍬をモデル化した三角柱などの形状も用い、現象発生への影響も現在検討を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
室内における再現実験は、路面材料の変化や振動体接触子の形状変化などを加えて順調に進んでおり、当初予定を超えるペースで実施できていることから進捗度は高いと考える。また、比較的荷重レベルの小さいレンジではあるものの、振動体接触子の圧力と貫入量に関する静的・動的実験も計画以上のペースで進んでおり問題はない。 一方で、観測については、「そろばん道路発生予報」を開始したものの、平成29年度の冬季気象条件が「そろばん道路発生」に結びつくような条件になる頻度が低かったため、予報の精度を十分に分析するに至らなかった面がある。発生が予測される条件を室内実験で再現できるようにすることを検討中である。 また、理論モデル構築については、複数の仮説のもとに現在モデルを考慮中であり、概ね当初予定通りに進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、観測については、「そろばん道路発生予報」が一定の精度でできるようになったことから、従前の定点観測から、発生が予測される時に集中的に観測態勢を強化する「集中観測方式」に転換したいと考えている。このため、これまでの調査研究から発生頻度の高い箇所を抽出し、予報が出た段階で機材と人員を集中的に配備するような方策を考えている。 室内実験については、これまでどおり室内再現実験を行うものの、理論モデルの立証を念頭においた実験条件の検討を行い、理論構築の進展にあわせた実験計画の立案を行う予定である。また、振動体接触子が路面に接触した後の貫入量の着目する基礎実験を繰り返してきたが、接触子が貫入することにより、周辺の路面材料が「どこに移動するのか」についても理論と実験の両面で確認する必要があると考えており、「投入エネルギーと貫入量」といった視点だけでなく、路面材料の二次元的・三次元的な移動についても研究を進めていく方針である。
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Causes of Carryover |
乾燥砂、人工雪、ガラスビーズなど、室内再現実験で必要な消耗品が、繰り返し利用を行うことで当初予想よりも購入量が小さくなったことと、共同研究者との打ち合わせがネット会議等で行えたことが理由である。平成29年度に予定していた消耗品の購入などで次年度に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)