2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K01306
|
Research Institution | National Institute of Occupational Safety and Health,Japan |
Principal Investigator |
玉手 聡 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所, 建設安全研究グループ, 部長代理 (10344243)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 智仁 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所, 建設安全研究グループ, 主任研究員 (20508634)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 土砂崩壊 / 生き埋め事故 / 土圧 / 保護具 / 実大模型実験 / 人型供試体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,土砂の圧迫から胸部を守るための保護具に必要な強度と構造の解明を目的に実験的な検討を行っている. その内容は、まず、崩土の圧力を計測するために胸部の模型を開発する。次に,この模型を崩壊土砂に埋没させて圧力を実測するための実大実験を行う.そして,人間工学的な検討から生存限界の作用圧力と限界たわみ度の関係を仮定し,胸部の圧縮係数を推定する.さらに、保護具を装着した胸部の状態を並列バネでモデル化し,土圧による傷害レベルが軽傷以下とするために必要な圧縮係数と強度を検討する。 今年度(平成28年度)は初年度であることから、一連の研究のベースとなる胸部模型の開発に注力した。この開発では複雑な形状を有する胸部表面で土砂の作用圧力を精度良く計測するための工夫を行った。 具体的には、表面に埋設するセンサーは小型のものを選択せざる終えない。これは先に述べたとおり胸部の表面は複雑な起伏を有するため面積が大きいセンサーを埋設することができないためである。一方、面積が小さな小型センサーによって土圧を直接計測する場合は、土との接触状態が問題となる。すなわち、これは土圧の計測値が土との接触状態に大きく依存するためであり、局所的に接触が不完全になると圧力が実際よりも過小に評価される問題を生じるためである。そこで本研究ではこの問題を解決するために、液体パックを介した間接的な計測手法を導入した。これによって計測データの信頼性が向上した。液体パックでは起伏を有する表面で面積を拡大させて受圧することが可能になる。そのため、パックの面積で平均化された圧力を安定的に計測出来るようになった。 以上のとおり,本研究では小規模崩壊をターゲットに,労働者が土砂に埋没しても命を守るために必要な胸部保護具の性能の考え方を検討している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
土砂崩壊によって作業者が生き埋めとなる事故状況を実大規模の模型実験で再現し,その時の土圧を計測した. 本研究ではレスキュー用マネキンを用いて人型供試体を開発した。マネキンの内部に軽石を充填して重量を調整し、関節部の抵抗力は摩擦板を追加して調整した。さらにマネキンの胸部には圧力計を取り付けた。ここでは、液体パックを介した間接的な土圧の計測システムを開発した. 次に、研究所内の実験場内に高さ4mの盛土を行い、これを切土して模型斜面を作製した。法先から1m離れた位置にコンクリート製のL型擁壁を設置し、その前面に人型供試体を座るように設置した。建設機械のバケットで盛土天端に上載荷重を与えて崩壊を誘発させ、落下した崩土が人型供試体に衝突した後に埋没する状況を計測した。実験ではその様子をビデオで記録すると共に土圧の時刻歴データを記録した。 本実験の結果,落下時に作用する衝撃的な圧力が埋没時の最大圧力であり,これが人体にダメージを与えることがわかった.平成28年度は斜面の高さが異なる条件で崩壊実験を再現し,埋没時の土圧を計測しデータの蓄積を行った.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は計画通り、人体胸部の限界たわみを人間工学的な検討に基づいて推定する.そして,最大圧力が作用した場合の胸部たわみを安全なレベルに収めるために必要な保護具の強度を解析する.さらに,その強度を有する保護具を簡易試作し,埋没実験で圧迫の軽減効果を確かめる. 以上のとおり,本研究では頭部よりも下の部分が埋没するような浅い埋没の状況において,胸部を圧迫から守る胴体保護具の必要強度について検討する.
|
Causes of Carryover |
予定していた文献等の購入を行わなかったため7130円の残額を生じたものである。この購入は翌年度に行うものとし、交付を受けた予算は適切に執行したい。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に繰り越す残額は図書費や資料の購入などにあてたいと考えている。
|