2016 Fiscal Year Research-status Report
がん幹細胞を生へ導く死細胞からのアラームシグナルとスイッチングマシーナリーの解明
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16K01360
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
岸本 幸治 徳島大学, 大学院生物資源産業学研究部, 講師 (50280699)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀村 典生 徳島大学, 大学院生物資源産業学研究部, 助教 (10632656)
宮下 知治 金沢大学, 附属病院, 助教 (30397210)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | がん幹細胞 / Gタンパク質共役受容体 / G2A / 酸化遊離脂肪酸 / 幹細胞制御因子 / 細胞周期阻害因子 / 酸化ストレス応答因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん幹細胞はDNA合成阻害を依拠とした抗がん剤の効果が低く、低酸素・低栄養状態の壊滅的な環境においても生存しえる。なぜ、がん幹細胞は酸化ストレスによる細胞死を逃れて生存しえるのか、そのメカニズムについては未だ解明されていない点が多く残されている。 我々はこれまでに細胞膜受容体であるG2Aが低酸素曝露によって産生される脂肪酸酸化物やDNA損傷によって活性化され、がん細胞の造腫瘍活性や幹細胞性を増加させることを発見し、独自の細胞評価系を樹立した。そこで本研究はこの評価系を用いてG2Aががん幹細胞の抗細胞死シグナルの伝達にどのように関与しているのかについて解明することを目的とした。 平成29年度は主にG2Aの細胞内環境に対する制御メカニズムについて研究を進めた。これまでにがん幹細胞様細胞となったヒト脳腫瘍細胞株U251細胞においてG2Aは細胞外の酸化ストレス状況を遊離脂肪酸の酸化を通じて抗細胞死シグナルへとスイッチングしていることを明らかにした。G2Aが酸化遊離脂肪酸を受容し、細胞内の酸化還元酵素、細胞周期阻害因子および幹細胞性因子の誘導を行っていること、さらにはG2Aの発現自体が抗酸化反応におけるマスターレギュレーター分子によって制御されていることを明らかにした。これらのことからがん細胞は酸化ストレスを生のシグナルへと変換するスイッチングマシーナリーの一つとしてG2Aを利用し、細胞の酸化還元システムの調節を通じて低酸素・低栄養環境下でも生存しえる手段を獲得していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に研究が進展している。がん幹細胞は脂質の酸化を通じて、酸化ストレスを化学シグナルに変換し、これを受容することによって生存のシグナルへと変換するスイッチングマシーナリーの一つとしてG2Aを利用し、細胞の酸化還元システムを調節していることを明らかにした。これまでにがん幹細胞が有する細胞内環境の制御システムについての解析をおこなってきたが、現在、未だ明らかになっていないカスペース3の核移行のメカニズムにG2Aがどのように関わっているのかについての検証を精力的に進める計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
がん幹細胞が持つ抗細胞死メカニズムについて、細胞内の環境制御因子の側面からの解析は順調に進んでいる。今後はG2Aが制御するカスペース3の核内移行という観点からG2Aと新規NAD合成系酵素(QRPT)との関係性を生化学的・分子細胞生物学的アプローチで検証し、がん幹細胞の抗細胞死メカニズムについてさらに明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
大学施設に既存の機器および試薬を用いて研究を遂行できたこと、また、予定していた学会報告も来年度以降に予定を回したため、予定額よりも研究費支出の節約を行うことが可能となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度、研究の山場を迎えるため、結果を論文校正および投稿費用、リバイス実験にかかる費用、結果報告のための学会報告出張日(海外・国内)などを目算すると、元の請求額と合わせて収支がとれると考える。
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