2017 Fiscal Year Research-status Report
課題難易度の差異による脳内ネットワーク活動の変化-効率的学習環境の解明-
Project/Area Number |
16K01527
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Research Institution | Aino University |
Principal Investigator |
酒井 浩 藍野大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30362388)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脳イメージング / 課題難易度 / ディフォルトモードネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の目標は健常若年者を対象としたfMRI実験を実施し,課題難易度と3つのネットワーク(中央実行ネットワーク(CEN),顕著性ネットワーク(SN),ディフォルトモードネットワーク(DMN))との関連を検討することであった。過去に行った実験結果 「 PASATの課題難易度と脳賦活部位の変化 , 酒井 浩 ,河内山隆紀 , 作業療法ジャーナル , 48巻 12号 (頁:1255-1262) , 2014年」 のデータを再利用したディフォルトモードネットワーク活動の抽出が可能かどうかの検討をしたところ,理論上は可能であることが判明したため,平成30年度は連携研究者である河内山隆紀氏が所属する国際電気通信基礎技術研究所(ATR)において健常若年者データの解析を依頼した。その結果,通常に行う連続暗算課題(PASAT)のシークエンスを用いた実験データからディフォルトモードネットワークを抽出することができ,課題難易度と前頭前野内側部(MPFC)との相関が認められた。上記文献に提示する中央実行ネットワーク(CEN)活動を対象としたデータ解析ではDLPFCにおいて課題難易度との相関が認められ,今回,ディフォルトモードネットワーク(DMM)を対象としたデータ解析ではMPFCと課題難易度との相関が認められたことから,課題負荷に対する耐久性が高い健常若年者においては課題難易度が上昇することによってCENとDMMの活動が活性化し,学習効率が高くなるものと考えられた。また,通常行われるCENを対象とした実験シークエンスにおいてDMMの活動が抽出できたことは,CENとDMMの関係を検討するうえで非常に有用であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度の目標は健常学生を対象としたfMRI実験を実施し,課題難易度と3つのネットワーク(中央実行ネットワーク,顕著性ネットワーク,ディフォルトモードネットワーク)との関連を検討することのみならず,健常高齢者における検討を行うことであったが,健常若年者のみの検討となった。これは,ディフォルトモードネットワーク用シークエンスを用いることなく,中央実行ネットワーク用に作成したシークエンスを用いた,ディフォルトモードネットワークと中央実行ネットワークの二つの活動の関係性を検討する方法が可能かどうかについての予備的解析とその検討に時間を要したためであった。しかしながら,中央実行ネットワーク用シークエンスにおいて,二つのネットワークの関係性を明らかにすることが可能となったことにより,平成30年度は健常高齢者のみを対象とした中央実行ネットワーク用シークエンスを用いた実験を行うことができれば,当初の研究目標を達成できる見込みとなり,これまでの遅れを回復させる可能性が大きくなったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
危惧される問題はディフォルトモードネットワーク(DMM)用実験シークエンスを用いてDMMの活動を抽出した場合には,逆に抽出された中央実行ネットワーク(CEN)が本来の課題に際する活動であったと言えない可能性がある。この点において,CENを対象とした実験シークエンスにおいてDMM活動の抽出が可能となった点は大きな意味を持つ。 今年度は健常高齢者を対象としたCEN用シークエンスを用いたfMRI実験を行うことによって,健常若年者との違いを明らかにすることが目標となるが,ここでは当然ながら過去に行った健常若年者と同じ実験シークエンスを使用することになる。このことは逆にすでに完成している実験シークエンスを活用することが可能であるため,予備実験を行う手間が省けることとなる。また,前年度に使用しなかった健常若年者用のfMRI撮像費用の一部を使用できるため,予備実験および再実験を行うことが可能であり,確実に結果を出すための環境が整ったといえる。
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Causes of Carryover |
(理由)本研究計画で発生する費用の大部分はfMRI実験に関連する費用であった。前述したように中央実行ネットワーク実験用のfMRI実験結果においてディフォルトモードネットワークが抽出できるかどうかについて,予備的実験と解析を行う必要性が生じた。また,検討した結果,抽出が可能であると判断したため,平成29年度は過去に行った健常若年者データを用いた本格的な解析を行い,当初の計画を修正する必要性が生じた。しかしながら,中央実行ネットワーク用実験シークエンスを用いたディフォルトモードネットワーク活動の抽出が可能であることが明らかとなったことの意義は大きい。 (使用計画)前述したように,過去の文献を参考にした既存データの分析から,ワーキングメモリー課題に準じた課題作成と解析によって中央実行ネットワーク,ディフォルトモードネットワークの抽出が可能であることがわかり,平成29年度は健常若年者におけるデータ解析を行った。平成30年度は健常若年者に用いた中央実行ネットワーク用実験シークエンスを用いて,健常高齢者に対する実験を行い,当初の研究目標を達成する。また,健常若年者における研究成果,および中央実行ネットワーク用実験シークエンスを用いたディフォルトモードネットワーク抽出が可能であった点について,今年度の実験遂行と並行して学会発表および論文化を目指す。
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