2017 Fiscal Year Research-status Report
前腕切断者を支援するための筋電位を用いた機器制御手法に関する研究
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16K01567
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
曲谷 一成 東海大学, 工学部, 教授 (00181610)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 筋電義手 / 手指の動作認識 / 多チャネル圧覚センサ / 把持力提示 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は平成28年度に引き続き以下の3つのテーマについて主に研究を進めた。1) このテーマを通して研究を行ってきた、多チャネル電極を用いた前腕義手制御システムを小型化し実際に前腕切断者が利用可能な物とする。2) このテーマの目標の1つである「義手で触った物体の情報を何らかの感覚として使用者にフィードバックする手法の確立」を実現するための義手に装着する圧覚センサおよびテクスチャセンサの開発。3) 2)の目標を実現するための、義手に装着したセンサから得た情報を利用者にフィードバックする手法の開発。 1)については先行研究から前腕部残存筋から導出した4チャネルのEMGで手指動作の高い認識率が得られる。今回は決定した4チャネルの電極位置に容易に電極を装着することが可能なソケットを開発した。つまり利用者の前腕部に形状を合わせたソケットを型取りし製作し適正位置に電極を配置した。正しい位置装着するため利用者の前腕部の静脈をマーカーとして固定を行う方式とした。2)については昨年同様フレキシブル基板を利用し電極を格子状にクロスさせた16チャネルの圧覚センサを開発した。このセンサは昨年製作した物に対し電極間に挟む誘電体を空気とすることで厚さおよび形状を大幅に小型化した。センシング原理は同期検波方式とし、ほぼクロストーク無しでリアルタイムの計測が可能であることが確認された。またテクスチャセンサとしてフォトリフレクタを利用した1チャネルのセンサを新たに開発し現在動作の確認を行っている。3)については前年度から継続して上腕に巻き付けたカフ圧をコントロールし義手の把持力をフィードバックする手法を主に研究した。今回は小型6自由度マニピュレータを義手の代わりに用いハンド部に取り付けた2)の成果を利用した1チャネルの圧覚センサの出力をフィードバックし義手利用者に把持力が正しく提示できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度に行った事項について更に検討をすすめ、更にテクスチャセンサの開発、実際に被験者を用いた把持力フィードバック機構の動作実験を行い良好な結果を得ることができた。 義手制御機構の小型化では、実際に利用者の前腕に合わせた樹脂製のソケットを製作しそこに4チャネルの電極を付け手指動作の認識実験を行った。ソケットを利用する際にはソケット装着時の電極位置が最初に決定した位置からずれないような工夫をする必要があるが、利用者固有の位置情報として利用者の前腕の静脈を利用し、ソケットに付けたマークを静脈上に配置することで位置決めを行う手法を開発した。これによりソケットをほぼ適正位置に固定することが可能であるとが確認された。 また、多チャネル圧覚センサについては前年度より小型化することができ、またクロストークの少ない高感度のものを開発することができたと考えている。なお、この研究成果は計測制御学会SI部門講演会において優秀講演賞を受賞している。また義手が触れた物体の触感を検知するためのテクスチャセンサの試験的な開発も行った。このセンサはフォトリフレクタを利用し、物体の表面形状を義手で触ったときのざらつきを検出する物である。ディスプレイの開発が今後の課題であるが物質の表面形状を良くセンシングできることが確認されている。 義手の把持力を提示するフィードバックシステムについては、今年度産業用ロボットに代えて小型6自由度マニピュレータを用い実験を行うことにした。マニピュレータのハンド部に多チャネル圧覚センサの技術を応用した1チャンネル把持力センサを付け、ここで検出した物体を把持する際の握力をカフ圧として利用者の上腕にフィードバックするシステムを試験的に構築し実験を行った結果、豆腐のような柔らかな物体であっても把持力の変化を明確に提示できることが確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、当初目標とした義手制御システムの完成に向けて以下のテーマについて行ってゆく予定である。 先ず、義手制御システムの小型化については当初から問題であった電極の簡易貼付が利用者に形状を合わせたソケットの開発により解決したので、今後はこの電極から導出したEMGを用い手指動作の推定を行う小型システムを構成してゆきたい。具体的には1チップマイクロプロセッサを用い制御可能なシステムを作るが、ここではプロセッサの負担を軽くするため、従来から用いている多チャネル筋電計を用いた大型システムにおいて求めた利用者毎に最適化した動作推定パラメータをプロセッサに移植し、プロセッサは単に線形推定を行い義手のコントロールを行うシステムとしたい。 また、多点圧覚センサおよびテクスチャセンサについてセンサ自身はかなりの完成度で開発できたと考えており、今後はこの結果を利用者に提示するためのディスプレイの開発を行いたい。具体的には昨年よりディスクバイブレータを複数個用いたディスプレイを試作しており、これをどのように制御したとき利用者にとって適切な感覚提示が可能であるかを研究してゆきたいと考えている。また義手の把持力を利用者にフィードバックするために用いている上腕カフの圧力を振動させるなど他の提示方法についても併せて考えてゆきたい。 把持力のフィードバックシステムについては現在カフ圧による把持力提示を行っているが、若干時間遅れがあることが問題になっている。これを解消するための機構の改良、新しい機構の開発が必要であり今年度はこの点を踏まえ研究を行いたい。また今までの成果としてカフ圧により柔らかい物体の把持力の提示が可能となったことから、実際に筋電位で動作するマニピュレータにこの機構を組み込み物体を適正な把持力で把持することができるシステムの開発を目指したい。
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Causes of Carryover |
理由:電子部品の購入に際して、価格が当初の計画から変動し予定金額に達することなく購入できたため若干の金額が次年度使用額となりました。 使用計画:昨年度購入することができなかった機材を購入することに使用いたします。
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