戦後オーストリアにおけるユダヤ人スポーツクラブの復興に関する歴史的研究

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 16K01652
• Research Institution: Tokyo Gakugei University
• Principal Investigator: 鈴木 明哲 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (70252947)
• Project Period (FY): 2016-04-01 – 2019-03-31
• Keywords: スポーツ史 / 戦後 / オーストリア / ユダヤ人 / スポーツクラブ / ハコア・ウィーン / 反ユダヤ主義

Outline of Annual Research Achievements

今年度はオーストリアに渡航し、ウィーンにて資料の収集、現地研究者との打ち合わせを行った。主な調査機関はウィーン大学スポーツ科学研究所図書館、オーストリア国立図書館、ウィーン市図書館、ユダヤ博物館付設図書館などであり、先行研究の閲覧と複写、来年度の本調査に備えての予備調査を実施した。先行研究に関する情報と助言をウィーン大学スポーツ科学研究所教授のミュルナー博士から得た。日本国内では一橋大学附属図書館で新聞資料の閲覧と収集を行った。
来年度の本調査はユダヤ博物館付設図書館での実施を計画していたが、今年度の予備調査の結果、研究目的に合致した資料がほとんど所蔵されていないことが判明した。しかしながら、当初予想していなかったマイクロフィルム資料がオーストリア国立図書館に所蔵されている情報を得ることができたため、来年度の本調査は当初の計画を変更してオーストリア国立図書館において実施する予定である。
また、先行研究や新聞資料の収集により、1946年3月と1948年11月に実施されたサッカーのリーグ戦において現出した暴動の様子を検討、考察することにより、ユダヤ人スポーツクラブの戦後復興の問題を解明していく大きな手立てになり得ることがわかってきた。さらに資料を補完しながら、この部分を深く掘り下げていくことにより、研究課題の解明がよりスムーズに進展していくことが予想される。また、「反ユダヤ主義」というより大きな問題へのアプローチも可能になっていくと考えられる。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

今年度は当初計画に従い、予備調査としてユダヤ博物館付設図書館を訪問し、所蔵資料の確認作業を行ったが、同図書館には研究目的に即した資料がほとんど所蔵されていないことが判明した。だが、その一方で、オーストリア国立図書館所蔵資料に今後の研究の進展に資するであろう新たな資料の存在が確認できたことにより、来年度の当初計画であったユダヤ博物館付設図書館資料の本調査を返上し、オーストリア国立図書館所蔵資料の本調査に変更する。このあたりは調査機関の変更に過ぎず、目的としていた資料が獲得できないという状況ではないため、研究の遅れを来すようなことにはならないと考えている。
また、研究対象とすべきスポーツクラブがSCハコア・ウィーンに特定できたことや、同クラブのサッカーゲームの実証と分析が大きな鍵であることなどが判明し、研究の具体的な方向性が見えてきた。
以上のような状況にあり、研究の進展はおおむね順調と判断できる。

Strategy for Future Research Activity

研究計画の大きな変更はないが、「現在までの進捗状況」で述べたように、来年度の本調査機関をユダヤ博物館付設図書館からオーストリア国立図書館に変更するだけであり、資料収集の進捗状況および今後の検討、考察に影響を及ぼすことはない。
来年度の予備調査機関としてはオーストリア抵抗資料館を計画しており、必要とされる資料の発掘ができた場合は、３年目に同機関にて本調査を実施する予定である。
また今年度の資料収集状況に鑑みて、まずは1946年3月と1948年11月のサッカーのゲームを検討、考察することとし、この事例に特化した資料を補完しつつ、最終的には戦後オーストリアスポーツにおける「反ユダヤ主義」の問題を論じてみたいと考えている。そのためには資料の収集と併せて「反ユダヤ主義」に関する国内外の先行研究にも視野を広げて収集、読解していきたい。
なお、2017年12月、フランスのシュトラスブールで開催されるヨーロッパスポーツ史学会において本研究の成果を報告する予定である。

Causes of Carryover

今年度の残金は\14,346であった。研究上必要とされるある古書資料の購入を予定していたが、この残金では不足していたため、購入を見送り、翌年度への繰越金とした。

Expenditure Plan for Carryover Budget

今年度購入を予定していた古書資料は、翌年度の助成金で不足分を補うことにより、購入できる。