2017 Fiscal Year Research-status Report
結核菌感染による脂肪組織の機能変動を介したメタボリックシンドローム病態変化
Project/Area Number |
16K01826
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
稲福 征志 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 助教 (90457458)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 肥満 / 結核 / BCG |
Outline of Annual Research Achievements |
培養脂肪細胞3T3-L1細胞を用いて、結核菌感染のプロトタイプである Bacille de Calmette et Guérin 菌(BCG菌)を暴露した際の、細胞反応について解析を行った。BCG菌を暴露した3T3-L1細胞においては、様々な遺伝子の発現が大きく変化しており、発現亢進が認められる遺伝子の殆どは免疫反応に関するものであった。脂質代謝に関する遺伝子群に焦点を当ててみると、脂質分解に関与する遺伝子の発現に変動は認められなかったが、脂質合成に関する遺伝子の殆どは発現が低下していた。一方では、培養肝臓細胞であるHepG2細胞にBCG菌を暴露したが、その遺伝子発現の変動は殆ど認められなかった。従って、BCG菌による刺激を肝臓細胞は受けにくいが、脂肪細胞は結核菌と同様に刺激を受けることが明らかとなった。次に、脂肪細胞は3T3-L1細胞の分化を誘導して、分化維持培地にて10日間培養した成熟脂肪細胞に対してBCG菌を暴露した。その結果として、暴露24時間目までは脂質合成関連遺伝子の発現は亢進したが、その後は低下していた。また、成熟脂肪細胞の細胞内の脂質蓄積量は経時的に減少していた。 次に高脂肪食誘導肥満マウスにBCG菌を尾静脈より投与して2週間後における白色脂肪組織内における遺伝子発現を解析したところ、培養細胞試験と同様に脂質合成関連遺伝子の発現が低下しており、脂質分解関連遺伝子の発現はさほど変化は認められなかった。これらの結果によって、脂肪細胞はBCG菌による刺激を受けて、脂質合成を抑制することが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度においては、結核菌と同様にBCG菌が脂肪細胞に刺激を与えることを明らかとなり、肥満病態におけるBCG菌暴露が主に影響を与える組織が脂肪組織であることが示唆されるデータを得ることができた。また、脂肪細胞においてはアディポサイトカインの放出が変動して他の組織へ影響を及ぼす可能性が見いだせた。従って、当該年度の達成度は「おおむね順調に進展している」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
BCG菌暴露による影響が主に脂肪組織で認められる可能性が高まった。従って、今後はマウスの白色脂肪組織に焦点を当てて、BCG菌の偏在や白色脂肪組織内の細胞種変動の解析を行う。更には、褐色脂肪組織における機能変動についても解析を行う必要があり、それらを統合して、BCG菌暴露が肥満病態に与える影響についての理解を深める。
|